後遺障害診断書とは?書き方の注意点は?

交通事故に遭って、後遺症が残るようなケガをしてしまった・・・そんな事故の被害者になってしまったとき、後遺障害認定の申請を行い、等級認定されれば症状に応じた補償を受けられます。後遺障害認定を申請する際に必要なものが、後遺障害診断書です。この後遺障害診断書の書かれた内容によって等級認定が決まってしまいますから、書き方には十分気を付けなければなりません。

今回は、後遺障害の等級認定までの流れや、認定申請に必要な後遺障害診断書を適切に書いてもらうための注意すべきポイントなどをご紹介します。

後遺障害の等級認定はどのような手続きで行われる?

後遺障害の等級認定を取るため、まず担当の医師に「後遺障害診断書」を書いてもらいます。後障害診断書のサイズはA3で書式は決まっています。ただし、病院では手に入りません。保険会社あるいは弁護士から入手してください。

後遺障害診断書を書いてもらったら、保険会社または弁護士を通じて自賠責調査事務所という機関に提出します。この自賠責調査事務所が、後遺障害の等級認定を行うのです。
後遺障害の等級認定を請求してから、通常2~3ヵ月ほどで等級の結果通知がきます。判断が難しい場合は、認定までに数カ月かかることもあります。

後遺障害の等級認定をされるともらえるお金

後遺障害の等級をとることで相手方の保険会社から様々な保険金(賠償金)が支払われます。主なものは以下の通りです。

  • 治療に対する慰謝料(入通院慰謝料)
  • 後遺障害が残ったことに対する慰謝料(後遺障害慰謝料)
  • 将来の収入減少に対する補償(逸失利益)
  • 今後必要になる介護費用(将来介護費)
  • 家屋改造費 など

後遺障害診断書はいつ書いてもらうのか?

後遺障害診断書を書いてもらうのは、医師が治療は終わりだと患者に伝えたとき、つまり「症状固定」のタイミングです。
ただし、症状固定としてしまうと、さらに別の後遺症が出てきたとしても、症状固定後の後遺症に対する治療費を請求することができなくなります。したがって症状固定にするかどうかは、担当の医師に現在の症状を伝えて、しっかり相談をした上で決めましょう。

後遺障害診断書の重要性

自賠責調査事務所は、原則として後遺障害診断書に書かれた内容だけを見て等級を認定します。場合によっては、弁護士が書いた書面を付けることもありますが、ほとんど参考程度で、診断書の内容を重要視しています。
そのため、医師の診断を受けるときは、どこの部分がどのような症状なのか、どの程度の痛みなのか、的確かつ具体的に医師に伝えることが大事です。また、レントゲン写真、経過の診断書などの提出や、調査員が傷跡などを確かめるため面談を求められることもあります。

後遺障害診断書の作成にかかる費用や期間

後遺障害診断書を医師に作成してもらう際の費用は、病院によって変わりますが、診断書作成料として1通につき5千円から1万円ほどかかります。この診断書作成料は、後遺障害が認定された場合には加害者側に請求することができます。ただし、後遺障害の認定とならなかったときは、自己負担になります。

また、後遺障害診断書の作成にかかる期間は10日から2週間ほどです。その場で書いてもらうことはできませんので、余裕を持って依頼しましょう。

後遺障害診断書の項目別の書き方

後遺障害診断書を作成するのは医学的知識を持った医師ではありますが、後遺障害の等級認定を受ける被害者本人も後遺障害診断書の内容については理解しておいた方がいいでしょう。

後遺障害診断書

では、早速、後遺障害診断書の項目別の書き方をみていきましょう。

①被害者の個人情報

氏名や性別、生年月日、住所、職業を記入。年齢や職業が空欄でも等級認定に大きな影響はありません。

②受傷日時

交通事故に遭って負傷をした日時を記入。

③症状固定日

症状固定日を記入。症状固定日とは、医師が治療の終了を患者に伝えた日のことをいいます。

④当院入院期間、当院通院期間

後遺障害診断書を書く医師が所属する病院での入通院期間を書きます。転院した場合は、原則として転院前の入通院した期間は書きません。

⑤傷病名

交通事故で負傷し、症状固定日時も残っている傷病名を記入。

⑥既存障害

既存障害とは、事故に遭う前から持っていた障害のことを指します。被害者からのヒアリングや、過去の通院歴などから記入。

⑦自覚症状

被害者本人が訴える症状を書きます。後遺障害の等級認定に関わるところですので、どこの部分がどのような痛みなのか、日常生活にどう影響するのかなどを医師に対して具体的に伝えましょう。そのためには、事前にメモを取っておくことをおすすめします。また、他覚症状の項目にまとめて自覚症状を書く医師もいますが、問題はないようです。

⑧各部位の後遺障害の内容

具体的な後遺障害の内容を記載します。特にレントゲンやMRIといった画像に映った異常は、後遺障害の等級認定に大きく関わる客観的な証拠ともなりますので、しっかり記入されているか確認しましょう。

⑨障害内容の増悪・緩解の見通しなど

後遺症について、増悪や緩解、軽減、不変など今後の見通しを書きます。医学の専門家である医師からの見解として後遺障害の等級認定に大きく影響するところですので、「他覚症状および検査結果」の項目と同様、医師が書いた診断書の要チェックの項目です。

後遺障害診断書を適切に書いてもらうための注意すべきポイントは

診断書の内容に間違えがないかどうか

後遺障害診断書を書いてもらった後、必ず内容を確認しましょう。医師も医療のスペシャリストといえども人間ですから、誤って書いてしまうこともあります。この場合、担当の医師に修正を依頼しましょう。

次に、間違えやすいポイントもご紹介します。

間違えることが多いのが、症状固定日や入院・通院期間です。例えば、症状固定日が平成29年のところを平成30年になっていたり、事故の前日になっていたりと、誤って書かれていることがあります。また、入院・通院期間も実際より短く記載されていることもあります。
特に数字の関わるところは間違えやすく、かつ等級認定に影響することもあるので、後遺障害診断書を書いてもらった後は、しっかりとチェックをしましょう。

このほか、間違えやすいのが、左右の記載がある項目です。例えば、「上肢・下肢および手首・足指の障害」の項目ですが、いずれも左右の可動域を検査して書き込みます。右腕が骨折しているのに、右が正常で左が全然上がっていない数値が書いてあるなど、左右を誤って記載されていることもありますので、こちらもチェックしましょう。

診断書の記入漏れがないかどうか。

診断書の記入漏れ(空欄)のチェックも大切です。よくあるのが、醜状障害に関する項目。頭や顔など露出しているところに残っている傷跡を記載しますが、薄い傷跡だと書いていないケースがあります。薄くても傷跡が残っていれば、等級認定に関わりますから、必ず医師に記入をお願いしましょう。

さらに、記入漏れの多いのは「上肢・下肢および手首・足指の障害」の項目にある短縮部分です。短縮は、右上肢(右足)と左下肢(左足)の長さを書きます。骨折などをしていると、左右の足の長さ変わってくることがあります。これも、後遺症の客観的事実として等級認定に関わりますので、空欄でしたら書いてもらいましょう。

等級認定に必要な検査が入っているかどうか。

後遺障害の等級認定が難しいのは、画像などの検査では分からない自覚症状のみの神経症状です。よくあるのが、むち打ちなどの症状ですが、どんなに痛くても本人が「痛い」と訴えるだけでは後遺障害も等級認定されません。

そこで、自覚症状を客観的に確認できる検査が必要になります。ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経根障害を調べる神経学的テストです。

ジャクソンテストというのは、検査者(医師)が、座った状態の被験者(患者)の頭を後方に倒して、痛みやしびれが出るかどうかを調べる検査になります。スパーリングテストも、ジャクソンテストと同じような状態で検査者が被験者の頭を後方に倒し、左右に傾けて痛みやしびれが生じるかどうかを調べます。

このように痛みの症状があっても画像などには映らない場合、医師に相談して上記のような検査の追加をお願いしましょう。

さらに、耳の聴力や耳鳴りの検査などを全くやらない、あるいは条件通りにやっていない場合があります。聴力検査についていえば、本来10日空けて3回検査をしないといけないのですが、2回しかやっていなかったり、各回10日間空けていなかったりと正確な方法で検査をしていないことが多々見受けられます。できれば、弁護士などに相談して、医師側に正確な検査方法をお願いしましょう。

重要項目が適切に書かれているかどうか。

前述した通り、「精神・神経の障害、他覚症状および検査結果」(①)と「障害内容の増悪・緩解の見通しなどについて」の2点は、特に後遺障害の等級認定に大きく影響する重要な項目です。

他覚症状および検査結果の項目は、画像などの検査から得た他覚的所見を書きますから、客観的見解として重要視されます。ですから、抽象的な表現ではなく障害がはっきりと分かるような具体的な書き方がベストです。

一方、今後の見通しを書く項目ですが、そこに「治癒の見通し」「緩解の見通し」などと症状の回復見込みがあると書いてしまうと、後遺障害の認定されない可能性が極めて高くなります。
その場合、「不変」と書き直してもらうよう医師にお願いしましょう。

適正な後遺障害の等級認定を受けるためには?

適正な後遺障害の等級認定を受けるためには、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。中でも、交通事故案件を専門に扱っている弁護士ならば、後遺障害診断書の作成へのアドバイスや、保険会社よりも慰謝料を多く請求できるといったメリットがあります。早いうちに、弁護士に相談するのがよいでしょう。

交通事故の示談を弁護士に相談するメリットを確認しましょう

弁護士に相談するメリットとは?

医師との関係がカギ?

適正な後遺障害の等級認定を受けるためには、後遺障害診断書を書いてもらう担当医師との関係を良好に保つことが大切です。

後遺障害診断書を書き慣れている医師でなければ、こちら(被害者)が望むような内容を書いてもらえるのは稀なこと。なので、医師が診断書を書いた後、多くの場合、書き直しや追記、検査の追加などをお願いすることになります。

単純なミスなどはともかくとして、医師の中には修正を嫌がる方も少なくありません。特に、今後の見通しの書き直しを渋る医師もいます。当然、医師としては患者のけがや病気を治すことが仕事ですから…今は後遺症があっても、医師が将来的に改善すると判断したら「治癒の見通し」と書くのも納得のゆくもの。それを「不変」(変わらない)に書き直してほしい、なんてお願いするのは医師の側からしたら不本意なことです。

とはいっても、後遺症があるわけですから。こちらが誠意を持って、医師と向き合いながら症状や後遺症への不安などを伝えましょう。