関節が曲がらなくなった場合の後遺障害等級と慰謝料は?

交通事故によるケガで関節が以前よりも曲がらなくなってしまうことは、決して少なくありません。関節が動かなくなる「可動域制限」では、どのくらいの後遺障害等級に認定されるのでしょうか。またその慰謝料はどのくらいなのか、詳しく見ていきましょう。

関節の可動域制限とは?

交通事故にあって手足に大きなケガをすると、肩やひじ、ひざなどの関節が元通りに曲げ伸ばしできなくなってしまうことがあります。これを関節の「可動域制限」といいます。

関節はそれぞれ、動かせる範囲が決まっています。たとえばひざなら足をまっすぐに伸ばした状態から、正座のように太ももとふくらはぎをぴったり合わせた状態まで、約180度動かせます。

しかし交通事故によるケガなどの原因で、足がまっすぐに伸ばせなくなったり、反対に足が曲がらなくなってしまったりする例は、決して珍しくはありません。ときには関節が硬直して、まったく動かせなくなってしまうこともあります。

それ以外にも、関節を動かす時に激しい痛みを感じる、スムーズに動かず引っかかりを感じるといったケースも、可動域制限に含まれます。

関節の可動域制限が起こる原因は?

交通事故によって関節の可動域制限が起こった場合、その原因は大きく2つに分けられます。ひとつは「骨組織の損傷」、もうひとつは「神経の損傷」です。

「骨組織の損傷」とは、骨折や脱臼による関節の変形、筋肉・腱・靱帯の断裂などで、関節の機能が失われてしまった状態を指します。もっと簡単に言うと、関節そのものが壊れてしまったということです。

「神経の損傷」とは、関節そのものには問題がないのに、関節を動かすための神経が傷ついたことで動かせなくなった状態を指します。頭で「関節を動かそう」と思っても、脳からの指令が関節に届かないのです。

場合によっては、骨組織の損傷と神経の損傷が同時に起こることもあります。交通事故による関節の可動域制限は、決して珍しくないと考えておきましょう。

どの関節に可動域制限があれば、後遺障害として認められる?

交通事故のケガによる可動域制限が起こりやすいのは、「上肢の3大関節」といわれる肩・ひじ・手首、「下肢の3大関節」といわれる股関節・ひざ・足首です。

これらの関節については、どのくらいの可動域制限で後遺障害の何級に認められるかが、部位ごとに細かく定められています。

腕(上肢)

1級4号 両腕ともに、肩・ひじ・手首のすべてが、まったく動かない
5級6号 片腕の肩・ひじ・手首のすべてが、まったく動かない
6級6号 片腕の肩・ひじ・手首のうち、2関節がまったく動かない
8級6号 片腕の肩・ひじ・手首のうち、どれか1関節がまったく動かない
10級10号 片腕の肩・ひじ・手首のうち、どれか1関節の可動域が半分以下になった
12級6号 片腕の肩・ひじ・手首のうち、どれか1関節の可動域が4分の3以下になった

足(下肢)

1級6号 両足ともに、股関節・ひざ・足首のすべてが、まったく動かない
5級7号 片足の股関節・ひざ・足首のすべてが、まったく動かない
6級7号 片足の股関節・ひざ・足首のうち、2関節がまったく動かない
8級7号 片足の股関節・ひざ・足首のうち、どれか1関節がまったく動かない
10級11号 片足の股関節・ひざ・足首のうち、どれか1関節の可動域が半分以下になった
12級7号 片足の股関節・ひざ・足首のうち、どれか1関節の可動域が4分の3以下になった

表にある「まったく動かない」とは、関節がこわばって完全に動かない状態だけではなく、可動域が10%以下になってしまった場合も含みます。

もちろん、上の表にある後遺障害が2つ、3つと重なって起こることもあるでしょう。その場合は「併合」といって、より高い等級に認定されます。

なお、手の指や足の指が曲がらない場合の後遺障害等級については、下記のページを参照してください。

関節の可動域はどうやって測る?

関節の可動域の測定は、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会によって定められた「関節可動域表示ならびに測定法」に基づいて行われます。実際に関節を曲げてみて、その角度を5度刻みで測定することになっています。

注意しておきたいのは、自分で曲げてみて、その角度を測るわけではないということです。測定する医師や理学療法士が動かして、どこまで曲がるのかを測定します。これを「他動値」といいます。

関節をどの方向にどう動かして測定するのかについても、部位ごとに細かく決まっています。一覧表を載せておきますので、ご参照ください。

主要運動 屈曲(腕を下ろした状態から、前を通って頭の上まで上げる動き)
外転・内転(腕を下ろした状態から、横を通って頭の上まで持ち上げる動き)
参考運動 伸展(腕を下ろした状態で、腕を背中側に持ち上げる動き)
外旋・内旋(肘を90度に曲げて、肘から先を体の外側や内側に回す動き)
ひじの屈曲と伸展

ひじ

主要運動 屈曲・伸展(曲げたり伸ばしたりする動き)
ひじの屈曲と伸展

手首

主要運動 屈曲・伸展(手を手のひら側に曲げたり、手の甲側に反らしたりする動き)
参考運動 橈屈(手を親指側に曲げる動き)
尺屈(手を小指側に曲げる動き)

股関節

主要運動 屈曲(足を伸ばした状態から、膝を抱えるようにする動き)
伸展(足を伸ばした状態で、足を背中側に持ち上げる動き
外転・内転(足を伸ばした状態で、横方向に足を上げる動き)
参考運動 外旋・内旋(足を伸ばした状態で、つま先を開いたり内股にしたりする動き)

ひざ

主要運動 屈曲・伸展(曲げたり伸ばしたりする動き)
ひざの可動域

足首

主要運動 屈曲・伸展(足をつま先までぴんと伸ばしたり、足の甲側に曲げたりする動き)
足首の可動域

表にある「主要運動」とは、日常生活で重要とされる動作のことです。「参考運動」とは、主要運動ほど重要ではないけれど、必要とされる動作だと考えておきましょう。

関節の可動域は、基本的に主要運動で測定されます。ただ、主要運動の測定値が少しだけ多い(5~10度)ために後遺障害等級がとれないといった場合に、参考運動の値を鑑みて後遺障害を認定することがあります。

関節の可動域は、何を基準に決める?

関節の可動域は、人によって異なっています。そのため、関節の可動域を測る際には、後遺障害が残ったほう(患側)と健康なほう(健側)を比較して判断することになります。

ただし、左右両方ともケガをしてしまい、健康な状態と比べられないケースもあるでしょう。そういったときのために、「参考可動域」と呼ばれる平均的な関節可動域の角度が、各関節や運動ごとに定められています。詳しい値は、下記の表をご参照ください。

部位 運動方向 参考可動域角度
屈曲(前方挙上) 180
伸展(後方挙上) 50
外転(側方挙上) 180
内転 0
外旋 60
内旋 80
ひじ 屈曲 145
伸展 5
手首 屈曲(掌屈) 90
伸展(背屈) 70
橈屈 25
尺屈 55
股関節 屈曲 125
伸展 15
外転 45
内転 20
外旋 45
内旋 45
ひざ 屈曲 130
伸展 0
足首 屈曲(底屈) 45
伸展(背屈) 20

症状に見合った後遺障害等級を取るためのポイントは?

交通事故によって関節の可動域制限が起こってしまった場合、後遺障害として認定されるには、レントゲン、CT、MRIなどの写真が必須だと考えておきましょう。

いくら「交通事故のケガで、関節が曲がりにくくった」と主張しても、それだけで後遺障害として認められるわけではありません。後遺障害として認定されるためには、関節の可動域制限が起きていることを、レントゲン・CT・MRIといった画像診断や検査などで証明しなければいけません。

ですから交通事故でケガをしたら、事故直後の画像を撮っておくことが重要です。事故から時間が経つと、交通事故と後遺障害の因果関係を証明するのが難しくなります。

また、時には診断書に角度が記載されていない場合があります。角度など診断書に肝心なことが書かれていないと、受け取れるはずの賠償額がかなり低くなってしまいます。

きちんと必要項目が診断書が記載されているか、また記載内容に誤りがないかなど、弁護士の意見を聞いてみることはかなり重要になってきます。

関節の可動域制限で受け取れる後遺障害慰謝料の相場は?

後遺障害が残ってしまったことで受けた、精神的なショックに対して支払われるのが後遺障害慰謝料です。後遺障害の等級が高いほど精神的なショックも大きいとみなされ、慰謝料も高額になります。

じつは後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」と呼ばれる3つの基準があります。自賠責保険は必要最低限の補償をするためのものなので、3つの中では一番低い金額になっています。弁護士基準は、過去の交通事故裁判の判例から弁護士会が分析したもので、最も高額です。

参考までに、関節可動域制限の後遺障害の中でも事例の多い8級、10級、12級について、自賠責保険基準と弁護士基準の相場を挙げておきます。後遺障害の申請や加害者側への慰謝料請求の代行を弁護士に依頼することで、自動的に弁護士基準が適用されます。

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
8級 324万円 約830万円
10級 187万円 約550万円
12級 93万円 約290万円

後遺障害慰謝料のほかに、受け取れる慰謝料はある?

後遺障害の慰謝料のほかには、「入通院慰謝料」があります。入通院慰謝料とは、交通事故で入院や通院することの精神的負担に対して支払われるものです。入通院慰謝料の金額は、入院や通院をした期間によって変わってきます。

たとえば半年(180日)入通院した場合の慰謝料を見てみましょう。
自賠責保険基準の場合、入通院慰謝料は1日あたり4,200円です。ただし治療費や休業補償と合わせて最大120万円までという上限があります。180日分の治療費はそれなりに高額になりますので、入通院慰謝料についてはほとんど支払われないケースも多くなります。

保険会社に任せた場合は、だいたいこれに近い金額が提示されると考えてください。

一方、弁護士が入った場合は入通院慰謝料も弁護士基準で計算されます。3ヶ月(90日)入院の後、3ヶ月(90日)通院した場合の入通院慰謝料は188万円です。もちろん治療費や休業補償とは別に支払われます。

入通院慰謝料の詳しい計算方法が知りたい方は下記のリンクをご覧ください。

後遺障害が残ったことで、慰謝料以外にもらえるお金はある?

後遺障害の慰謝料以外にもらえるお金としては、「逸失利益」があります。たとえば、可動域制限のせいで交通事故の前と同じ仕事ができなくなった、仕事を辞めなければならなくなったといったケースでは、関節の可動域制限が残ったために得られなくなった収入額を、逸失利益として計算します。

ただし「関節を動かすときに痛みがある」という神経障害は人によりかなり感じ方が異なります。したがって、きちんとした主張がないと、痛みがあると認めてもらうことさえ難しくなります。

しっかりとした資料をそろえて逸失利益を主張し、できるだけ高い金額を支払ってもらうためには、損害賠償の専門家である弁護士の力が必要になります。

関節可動域制限の正当な慰謝料・保険金を受け取るには?

まず重要なのは、できるだけ高い後遺障害等級に認定されることです。そのためにも、交通事故の被害者側が後遺障害の申請をする「被害者請求」を選びましょう。

加害者側の保険会社としては、できる限り保険金を支払いたくないものです。加害者側の保険会社が手続きをする「事前認定」だと、資料が十分でないといった理由で、実際の症状よりも低い後遺障害等級になってしまうことがあります。

ただ交通事故被害者としては、後遺障害に苦しみつつ申請手続きをするのは大変なことでしょう。負担を減らしつつ、できるだけ高い後遺障害等級に認定されるためにも、交通事故の賠償請求に長けた弁護士に依頼したいものです。

弁護士に依頼すると、それだけで慰謝料が弁護士基準で計算されます。また逸失利益についての主張も、経験豊富な弁護士に任せたほうが認められやすくなります。交通事故で関節の可動域制限が生じるほどの骨折をした場合は、なるべく早く弁護士に相談してベストな解決を目指しましょう。

被害者請求の方法やメリットを確認しましょう

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