高次脳機能障害の慰謝料は?その症状と後遺障害等級認定基準について

「高次脳機能障害」とは、人の「話す」「覚える」「考える」など「脳の高度な機能」に障害が生じることです。人が社会生活を営むうえで最も重要とされる脳の機能に障害が残るわけですから、仕事ができなくなってしまうことはもちろん、そもそも日常生活すら自力ではできなくなってしまう場合もあります。

したがって、相手側の保険会社からできるだけ多くのお金を受け取らないと、その後の生活が立ち行かなくなってしままうことも考えられます。
実際に、交通事故で脳に損傷が生じて「高次脳機能障害」となった場合、相手側の保険会社から支払われる慰謝料などの賠償金が、総額で3億円を越えることさえあります。

高次脳機能障害の慰謝料・賠償金の相場

「高次脳機能障害」で支払われる慰謝料などの賠償金額は、被害者の方の年齢や状況により異なります。目安として、実際に裁判等で認められた賠償金例をいくつかご紹介します。

事故の後遺症 慰謝料・賠償金の合計  
高次脳機能障害(1級1号 要介護) 約2億3293万円 ※1
高次脳機能障害(2級1号 要介護) 約1億4810万円 ※2
高次脳機能障害(7級4号、併合6級) 約8544万円 ※3

※1 被害者は45歳男性 高次脳機能障害により後遺障害1級(要介護):平成22年10月東京地裁判決
※2 被害者は38歳男性 高次脳機能障害により後遺障害2級(要介護):平成29年4月東京地裁判決
※3 被害者は31歳男性 高次脳機能障害により後遺障害7級(併合6級):平成30年アズール法律事務所事例

保険会社は支払いに応じない?

問題は、相手側の保険会社が簡単には支払いに応じないということです。
「高次機能障害」では症状がわかりにくいため、介護費など必要な賠償金をなかなかすんなりと支払ってくれません。ポイントをついた「交渉」をしっかりと行う必要があります。

また、慰謝料などは「後遺障害等級」に応じて支払われるため、しっかりと「等級」を取らないと、そもそも支払ってもらえません。「高次脳機能障害」で後遺障害等級が認められるためには、脳に関する専門的な診断書や画像を揃えなければなりません。

「高次機能障害」はとても困難な障害ですので、被害者の方はかなり辛い思いをされていると思います。にもかかわらず、「等級」の取り方や「交渉」のやり方がまずいと、賠償金をきちんともらえないという状況になってしまいます。
そうした事態を避けるためには、まず専門医に医師にしっかりした診断書を書いてもらうこと、そして交渉や申請が得意な弁護士を探すことがとても重要です。

詳しくはぜひ続きを読んでください

・高次脳機能障害の症状がわかります
・後遺障害等級認定の条件がわかります
・実際の慰謝料や賠償金の内容や交渉方法がわかります

交通事故での高次脳機能障害のご相談は
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高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳の一部が損傷することによって思考、記憶、学習、注意、意志、言語など「脳の知的活動」に障害が生じることを言います。

一般的に「高次脳機能障害」と診断される患者の8~9割は脳梗塞などの疾患や加齢を原因とするものですが、交通事故などによる「脳外傷による高次脳機能障害」も全体の約1割に及びます。

交通事故の被害によって、頭部(脳)に衝撃を受けて一定時間以上のあいだ意識を失った場合は、意識が戻り身体が動くようになったとしても、「高次脳機能障害」の後遺症が残ってしまう場合が少なくありません。

意識が戻ってしばらくしても「新しいことが覚えられない」「ひとつのことに集中できない」「計画どおりに行動できない」「感情がコントロールできない」などの症状がある場合には、高次脳機能障害である可能性があります。

高次脳機能障害の原因となる脳外傷

ではまず「高次脳機能障害」の原因となる交通事故による脳の損傷にはどういったものがあるか見てみましょう。 担当医師の診断書に記載される症状に該当するものがあれば注意が必要です。

頭蓋骨(ずがいこつ)骨折

頭蓋骨はヘルメットのように脳を保護しています。交通事故の衝撃で頭蓋骨にひびが入ったり、陥没(かんぼつ)した場合には、脳の一部も損傷している可能性が考えられます。

局所性脳損傷(脳挫傷、硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳内血腫)

「局所性脳損傷」は交通事故の衝撃により脳の一部が損傷することをいいます。
診断名としては症状により「脳挫傷」「硬膜外血腫」「硬膜下血腫」「脳内血腫」などと書かれる場合があります。

「硬膜」というのは頭蓋骨と大脳のあいだにある膜のことで、「硬膜」の外側に血のかたまりができるのが「硬膜外血腫」、「硬膜」の内側に血のかたまりができるのが「硬膜下血腫」、脳の内部に血のかたまりが見られるのが「脳内血腫」です。

頭蓋骨と硬膜・くも膜
頭蓋骨と硬膜・くも膜

損傷した脳の部位により、かなり重い症状となる場合があります。また回復した場合も「高次脳機能障害」となる可能性を否定できません。

びまん性脳損傷(脳震盪、びまん性軸索損傷)

「びまん性」というのは「広い範囲」というような意味です。「びまん性脳損傷」は脳全体が強い力で揺さぶられて、脳の広い範囲に多数の損傷が生じることをいいます。
交通事故の衝撃で脳が揺さぶられて、意識を失ったのが6時間以内の場合は「脳震盪(のうしんとう)」、6時間以上の意識障害があった場合には「びまん性軸索損傷(びまんせいじくさくそんしょう)」に分類されます。

「軸索(じくさく)」は脳の神経細胞から突き出ている枝のような部分です。交通事故の衝撃で脳が強く揺さぶられると、神経の枝である「軸索」がちぎれてしまうことがあります。

神経細胞と軸索
神経細胞と軸索

神経はそれぞれがつながって情報をやり取りしていますから、軸索が切れてしまうと情報をやり取りできなくなってしまいます。「びまん性軸索損傷」は軸索が広い範囲でちぎれてしまうことをいいます。

「びまん性軸索損傷」の場合、意識が戻った後に「高次脳機能障害」となる可能性があると考えられます。

高次脳機能障害につながる意識障害(意識不明)

交通事故で頭を打って気を失った場合、つまり「意識障害」があった場合は、意識が回復した後も「高次脳機能障害」となってしまう可能性があります。
特に6時間以上の「意識障害」が確認された場合には「高次脳機能障害」が残る可能性が高まると言われています。

しかし、なかには数週間以上も意識が戻らなかったにもかかわらず、ほぼ元通りに回復した例もありますので、意識障害が6時間以上の場合に必ず「高次脳機能障害」となるわけではありません。
脳の自己修復能力は加齢とともに低下するため、高齢者ほど回復は難しくなる傾向にあります。

高次脳機能障害に見られる症状

「高次脳機能障害」の具体的な症状はどんなものか見てみましょう。実際にはいくつかの症状が同時に見られる複合的なケースが多いようです。

1.注意障害

「注意障害」は「物事に集中できない」「周りに注意を向けることができない」といった症状です。具体的にはおおまかに以下の4つの症状が見られます。

覚醒度低下 ぼーっとした感じ、表情が乏しい感じ、全ての面で反応が遅くなる。
持続力低下 周りの声や音に注意が向いてしまい、本来注意を向けるべきものに集中して取り組めなくなる。
伝導性低下 周りの状況に気がつかないために、うまく行動へと移れなくなる。
転換性注意力低下 状況に応じて注意の変換がうまくできないために、同じような行動を繰り返したり、同じことを何度も言ってしまう。
2.記憶障害

「記憶障害」は「思い出せない」「新しく覚えることができない」といった症状です。具体的には以下のように分類されます。

前向性健忘 事故の前のこと思い出せるが、新しいことを覚えることができない。
逆行性健忘 事故前の記憶が思い出せなくなる。自分や家族の名前が思い出せない。
短期記憶障害 読書や計算などに使われる短期記憶の能力が損なわれる。ついさっきのことが思い出せない。
長期記憶障害 永続的に保持される長期記憶の能力が損なわれる。通いなれた道順や運転のしかたがわからなくなる。
3.遂行機能障害

「遂行機能障害」は「事態の変化に対応できない」「ものごとの段取りが悪い」といった症状です。具体的には下記のような障害が見られます。

目標の設定の障害 未来における目標を設定できない。
計画立案の障害 目標を達成するための計画を立てられない。
計画実行の障害 正しい手順で計画を実行できない。
効果的な行動の障害 効果を判断し、行動を必要に応じて修正することができない。
4.社会的行動障害

「社会的行動障害」は、行動や言動、感情をその場の状況にあわせてコントロールできなくなることで、具体的には下記のような症状です。

意欲、発動性の低下 自分で何をしたら良いのか考えられず、ボーッとしたまま過ごしてしまう。
感情コントロールの低下 その場の状況判断ができず、怒りや悲しみ、情緒のコントロールができない。急に怒り出したり、大声を出したりする。
欲求コントロールの低下 なんでも無制限に欲しがる。我慢ができない。
共感性の低下 相手の立場や気持ちを考え、思いやることができない。
依存性・退行 すぐに人に頼る。子どもに戻ったようになる。
固執性 同じことをいつまでも続ける。こだわりが強く人の意見をきかない。
5.失語症

「失語症(しつごしょう)」は「言葉が出てこなくなる」「相手の話す内容がわからない」といった症状です。

運動性失語 話を聞いて理解することはできるが、話そうとしても言葉が出てこなくなる。
感覚性失語 言葉の理解が難しい。発話はなめらかだが言い間違いが多く、意味が通らない。
6.失行症

「失行症(しっこうしょう)」は「簡単な動作やマネができない」「使い慣れた道具が使えない」という障害です。

観念運動失行 意識しないときは問題なくできる動作が、意識するとできなくなる。
観念失行 行為の順番や道具の使用方法がわからなくなる。
7.失認症

「失認症(しつにんしょう)」は視力や聴力、触覚に問題がないのに、見たもの、聞いたもの、触ったものが何かわからないという障害です。

視覚失認 見えてはいるが、見えているものが何かわからない。または、何かはわかるが、何に使うものか、何という名前なのか、関連付けることができない。
半側身体失認 身体の片側に気が付きにくい。または無視してしまう。

高次脳機能障害の治療・リハビリ

損傷してしまった脳細胞は再生することはありませんが、脳自体には回復機能があることが知られており、死んでしまった脳細胞を別の新しい脳細胞が補うようなかたちで機能が回復することがあります。このため、事故直後よりも時間が経つと、高次脳機能障害の症状について回復が見られる場合があります。

また適切なリハビリテーションを受けることで、訓練による治療効果で、症状が回復する場合があるようです。

しかし、現時点では脳外傷による「高次脳機能障害」に対する確立された治療法は無く、完全に回復することはなかなか難しいと言わざるをえません。

したがってリハビリテーションの目標としては、完治を目指すということではなく、残存してしまった障害をうまくカバーする方法を身につけることを目標にすることになります。それにはまず、障害の内容を理解したうえで、それを補うために必要な動作や技能を修得していくことが必要です。

高次脳機能障害の後遺障害等級認定

交通事故による「高次脳機能障害」で、慰謝料などの賠償金を受け取るためには「後遺障害」として認定されることが必要になります。

高次脳機能障害が認定されるための3つの条件

「高次脳機能障害」が「後遺障害」として認定されるためには、もちろん例外はありますが、次の①~③の条件を満たす必要があると言われています。

①事故による脳へのダメージが確認できること

交通事故による高次脳機能障害が認められるためには「事故によって頭に強い衝撃を受けて、脳に損傷が生じていること」が条件になります。

具体的には、事故の後の診断書に「脳挫傷」「頭蓋骨骨折」「硬膜外血腫」「硬膜下血腫」「脳内血腫」「びまん性脳損傷」などの脳外傷を示す診断名が記載されていることが望ましいと言えます。

また、事故後に撮影した頭部のCTやMRIの画像で、脳にダメージがあることが確認できることも重要です。できるだけ早いタイミングからCTやMRIでの撮影を複数回行い、脳の損傷や脳萎縮等の進行を確認するようにしてください。

頭部のCT画像
頭部のMRI画像

※X線を使うCTでは頭蓋骨の状態がよく確認できます。一方、電磁波を使って撮影するMRIではより鮮明に脳の状態を確認することができます(画像の右上に血腫が確認できます)。

②事故後6時間以上の意識障害があったこと

交通事故による高次脳機能障害が認められるためには、事故後に少なくとも6時間、通常は24時間以上の意識障害、いわゆる意識不明の状態であったことが必要になります。
逆に、脳震盪(のうしんとう)などによる短時間の意識障害、軽度の記憶障害では、その後に高次脳機能障害と認定されることは難しくなります。

意識障害がある場合は「JCS(ジャパンコーマスケール)」または「GCS(グラスゴーコーマスケール)」による意識レベルの評価を行い、その数値を診断書に記載されていれば正しい評価につながります。

JCSが3桁、GCSが8点以下(半昏睡または昏睡で開眼・応答しない状態)であれば、一定程度の意識障害とみなされ、回復後に高次脳機能障害が認定される可能性が高くなります。
また、JCSが2桁、GCSが13〜14点の場合でも軽度の意識障害とみなされ、その状態が1週間以上続いた場合には、回復後に高次脳機能障害を認められる傾向があります。

③高次脳機能障害の症状が確認できること

交通事故による高次脳機能障害が認められるためには、入通院中の経過診断書や後遺障害診断書に、具体的な高次機能障害の症状が生じていることの記載が必要になりまます。
つまり、高次脳機能障害による「注意力の低下」「記憶力の低下」「判断力低下、知能低下」「情緒不安定」「暴言・暴力」などの症状があることを証明する必要があります。

そのためには、医師により行われる各種の神経心理学的検査の結果を診断書に記載することがまず必要です。担当医が高次脳機能障害に詳しくない場合は、専門医を紹介してもらうことも必要になります。

それに加えて、ご家族による日常生活報告書を作成し、被害者の方の事故の前後での性格や知能の変化をしっかりと伝えることも重要です。

高次脳機能障害で認定される後遺障害等級

高次脳機能障害はその症状の重さにより、認定される「後遺障害等級」が決まります。
高次脳機能障害が該当する後遺障害等級は「1級(要介護)」「2級(要介護)」「3級」「5級」「7級」「9級」です。ただし、実際の症状によっては、それ以外の等級に認定される場合もあります。

後遺障害等級:第1級1号(要介護)

高次脳機能障害による重度の認知症で、生活維持に必要な身の回りの動作全般について介護が必要な場合や、精神状態が極度に不安定で常時監視を必要とする場合には後遺障害1級1号に認定される可能性があります。

その場合、弁護士基準での後遺障害慰謝料は2800万円、逸失利益は労働能力喪失率100%で計算することが基本となります。

後遺障害1級1号
(要介護)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
後遺障害慰謝料
(自賠責基準)
1650万円
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
2800万円
労働能力喪失率 100%

後遺障害等級:第2級1号(要介護)

高次脳機能障害の症状(判断力の低下、情緒不安定など)が重いために、自宅からひとりでは外出することができず、生命維持に必要な身辺動作についても、家族からの声かけや見守りが随時必要な場合には後遺障害2級1号(要介護)に認定される可能性があります。

その場合、弁護士基準での後遺障害慰謝料は2370万円、逸失利益は労働能力喪失率100%で計算することが基本となります。

後遺障害2級1号
(要介護)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
後遺障害慰謝料
(自賠責基準)
1203万円
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
2370万円
労働能力喪失率 100%

後遺障害等級:第3級3号

日常生活に必要な動作や自宅周辺への外出はひとりで行えるものの、高次脳機能障害の症状(記憶力・学習能力の低下、注意力・集中力の低下、対人関係維持能力の欠如など)が重いために、仕事に就くことが全くできないと判断される場合には、後遺障害3級3号に認定される可能性があります。

その場合、弁護士基準での後遺障害慰謝料は1990万円、逸失利益は労働能力喪失率100%で計算することが基本となります。

後遺障害3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
後遺障害慰謝料
(自賠責基準)
861万円
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
1990万円
労働能力喪失率 100%

後遺障害等級:第5級2号

高次脳機能障害のために新しい作業の学習や環境の変化への対応に問題があり、就労については単純繰り返し作業などに限定され、仕事を続けるには職場の理解と援助が必要と判断される場合(一般の人に比べて4分の1程度の労働能力)は、後遺障害5級2号が認定される可能性があります。

その場合、弁護士基準での後遺障害慰謝料は1400万円、逸失利益は労働能力喪失率79%で計算することが基本となります。

後遺障害5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
後遺障害慰謝料
(自賠責基準)
618万円
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
1400万円
労働能力喪失率 79%

後遺障害等級:第7級4号

仕事に就くことは可能なものの、高次脳機能障害の症状のためにミスが多かったり、約束を忘れる、手順が悪いなどの問題があり、一般の人の半分程度の作業しかできないと判断される場合(一般の人に比べて2分の1程度の労働能力)は、後遺障害7級4号に認定される可能性があります。

その場合、弁護士基準での後遺障害慰謝料は1000万円、逸失利益は労働能力喪失率56%で計算することが基本となります。

後遺障害7級4号 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
後遺障害慰謝料
(自賠責基準)
419万円
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
1000万円
労働能力喪失率 56%

後遺障害等級:第9級10号

仕事に就くことはできるものの、高次脳機能障害の症状ために問題解決能力や作業効率、作業持続力に問題が出ると判断される場合は、後遺障害9級10号に認定される可能性があります。

その場合、弁護士基準での後遺障害慰謝料は690万円、逸失利益は労働能力喪失率35%で計算することが基本となります。

後遺障害9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
後遺障害慰謝料
(自賠責基準)
249万円
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
690万円
労働能力喪失率 35%

高次脳機能障害の慰謝料・賠償金

交通事故による「高次脳機能障害」で後遺障害等級が認定されると、相手側の保険会社等から慰謝料などの賠償金を受け取ることができます。

後遺障害等級やそれぞれの状況によって金額は変わってきますが、症状が重い場合は合計2億円をこえる賠償金を受け取った例もあります。

では実際にどのような賠償金を受け取れるのか見てみましょう。

後遺障害慰謝料

交通事故による「高次脳機能障害」で後遺障害等級が認定された場合は、相手側の保険会社等から「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。これは後遺障害等級によっておおよその金額が決まっています。

「高次脳機能障害」で認定される可能性のある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の金額は以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
1級(要介護) 2800万円
2級(要介護) 2370万円
3級 1990万円
5級 1400万円
7級 1000万円
9級 690万円

ただし、この金額は弁護士のサポートを受け、保険会社との交渉を「弁護士基準」で行なった場合のものです。保険会社にまかせた場合の提示額はこの半分以下になってしまう場合も少なくありません。

逸失利益

「高次脳機能障害」の症状がある場合、事故の前と同じように仕事をして収入を得るのは難しくなります。場合によっては全く仕事ができなくなって収入がゼロになってしまうことも考えられます。

そうした失われてしまうであろう将来の収入は「逸失利益」として、相手側の保険会社に請求することになります。被害者の方の年齢によっては、数十年分の収入額ということになる場合もありますが、基本的には示談成立時に一括で支払われます。

逸失利益の計算式

基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(労働能力喪失期間による)

「逸失利益」は上の式で計算されます。ちょっと難しい言葉が並んでいますが、この計算式自体は弁護士でも保険会社でも違いはありません。

しかし計算のベースとなる「基礎収入」をいくらに設定するか、後遺症が仕事に与える影響(労働能力喪失率)をどのくらいと考えるか、事故がなければあと何年働くことができたと考えるか(労働能力喪失期間)などについては、弁護士と保険会社の意見が割れることが多くなります。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級(要介護) 100%
2級(要介護) 100%
3級 100%
5級 79%
7級 56%
9級 35%

保険会社に任せた場合は、なるべく支払い額を少なくしたいという思惑から、十分な「逸失利益」を認めてくれないことが多々あります。
これに対して弁護士が入った場合は、被害者の方が受け取るべき正当な金額を主張します。そのため「逸失利益」についても、弁護士に依頼すると有利になる場合がほとんどです。

将来介護費など

重度の「高次脳機能障害」の場合、生活維持に必要な身の回りの動作全般について自力で行うことができなくなるため、これから先の生活では介護や声がけが必要になります。ヘルパーや介護士などの専門の人を雇う場合はもちろん、家族が仕事を休んで介護をする場合も「将来介護費」として今後の介護費用を相手側の保険会社に請求することができます。

こうした費用を受け取るためには、相手側の保険会社に対して的確な請求をして、しっかりと交渉する必要があります。ただ待っているだけで保険会社から支払われる…といことはほとんど無いと言ってもよいでしょう。

しかし、被害者の方からすると、何をどのように請求したらよいのかわからないというのが現実ではないでしょうか。こうした交渉についても、実績がある弁護士にご相談いただくことで、漏れなく保険会社に請求することが可能になります。

これらの積み重ねで、弁護士が入った場合の被害者の方が受け取る最終的な賠償金は、保険会社の提示額の数倍になることもめずらしくありません。

治療費・休業損害・傷害(入通院)慰謝料など

交通事故によるケガの治療にかかる費用はすべて相手側の保険会社等から支払われるのが原則です。また、治療で仕事を休むことによる減収についても「休業損害」として支払われます。さらにケガの治療に伴う精神的苦痛に対する賠償として「障害慰謝料(入通院慰謝料)」が入通院の期間に応じて支払われます。

項目 内容
治療費 入院費用を含め、直接保険会社から実費が病院に支払われます。
おむつ・松葉杖・車椅子代など 実費を請求可能です。
休業損害 休業した日数分の金額が毎月支払われます。
交通費 通院のための交通費は実費が支払われます。タクシー代や付き添いのための交通費は交渉により認められる場合があります。
傷害慰謝料(入通院慰謝料) ・入院1ヶ月につき約50万円・通院1ヶ月につき約25万円※実際の金額は赤い本の入通院慰謝料表(別表1)によります

ただし、これは弁護士が入って「弁護士基準」で保険会社と交渉した場合の話です。保険会社にまかせた場合は、この通り支払われることはなかなか難しいというのが実情です。

高次脳機能障害の後遺障害等級認定と示談交渉

「高次脳機能障害」は事故に遭ったご本人だけでなく、ご家族の今後をも大きく左右します。しかし相手側の保険会社はすんなりと最高額の慰謝料などの賠償金を支払ってくれるわけではありません。

症状が重い場合は、賠償金も高額になります。それだけに支払う側の保険会社としても、なるべく金額を抑えようとすることが考えられます。

そうした状況の中で、しっかりとした賠償金を獲得するには、やはり弁護士による法律的なサポートが欠かせません。

弁護士に依頼することで、保険会社とのやりとりはすべて法律事務所に任せられます。弁護士は被害者の方が有利になることを第一に考えて対応しますので、安心して治療やリハビリに取り組むことができるようになります

示談交渉の流れ

交通事故の被害で「高次脳機能障害」による後遺症が残った場合の示談交渉の流れを簡単にまとめたのが下の図になります。

示談交渉の流れ
示談交渉の流れ

「事故発生」から半年~1年半ほどの「治療」を行ったうえで「これ以上の劇的な回復は見込めない」と医師が判断することを「症状固定」といいます。その後、担当の医師が発行した後遺障害診断書とそれまでの治療経過、弁護士の意見書などを揃えて、後遺障害等級認定の申請を行います。申請から結果が出るまで、おおよそ3~6ヶ月程度かかります。

後遺障害等級が認定されたら、最終的な慰謝料などの金額について保険会社と「示談交渉」を行います。納得できる金額の提示があれば示談成立となりますが、どうしても納得できない場合は時間をかけて裁判をすることになります。

後遺障害等級が正しく認定されるために

後遺障害等級の認定では提出された書類によって審査が行われます。
「高次脳機能障害」で後遺障害の認定を受けるには、症状固定時に担当医師に発行してもらう「後遺障害診断書」と、脳に損傷があったことを証明するMRIなどの画像資料がとても重要です。

ただし「高次脳機能障害」の診断については、専門的な医学知識が必要なため、すべての病院で的確な診断や治療が行えるわけではないのが実情です。

意識の回復や頭部外傷の治癒を意識するあまり、回復後の「高次脳機能障害」が見落とされるということも少なくありません。医師は事故前の患者の普段の様子を知らないため、認知障害や人格変化に気づきにくいという問題もあります。

「高次脳機能障害」について正しく診断や治療が行われなければ、後に正しい後遺障害等級をとることも難しくなります。適切なタイミングで画像を撮影していなかったり、事故後の意識障害についての正しい判定記録がなければ、後遺障害認定では不利になります。

もしもご家族が「高次脳機能障害」の症状に気づいたら、必ず担当医師に相談するようにしてください。専門的な医療機関に転院することも選択肢のひとつです。

「高次脳機能障害」の場合にどのような医療機関があるか、またどのような検査結果や画像が必要になるかについて、経験のある弁護士であれば的確なアドバイスすることができます。そうした意味で、なるべく早い段階で弁護士への相談を行うことが非常に有効になります。

保険会社とは交渉が必要

後遺障害等級が認定されても、実はそれだけでは賠償金を受け取ることはできません。慰謝料などの賠償金を実際に支払う相手側の保険会社と交渉して金額を決定する必要があります。

金額の決め方は2種類です。被害者の方が直接に保険会社と交渉する方法と、弁護士が代理人として保険会社と交渉する方法があります。どちらを選ぶかによって受け取れる金額が大きく違ってきます。

被害者の方が直接に保険会社と交渉する場合、ベースとなる金額は「任意保険基準」という保険会社が独自に決めた基準で決定されます。これは総額で見ると、ほぼ最低限とされている金額か、それよりは少し多い程度であることがほとんどのようです。

これに対して、弁護士が保険会社と交渉する場合には「弁護士基準(裁判基準)」でベースの金額を計算します。これは、交通事故の裁判での判決をもとにつくられた基準です。被害者の方が本来受け取るべき金額の目安ともいえるでしょう。

弁護士が入って交渉した場合は、保険会社と直接交渉した場合に比べて、慰謝料などの賠償金は大幅に増額することがほとんどです。実際に2倍以上の金額が受け取れることも珍しくありません。

高次脳機能障害の慰謝料・賠償金の事例

実際に被害者の方の代理人として弁護士が入って示談交渉や裁判を行い、高額の賠償金を獲得した「高次脳機能障害」事例を紹介します。

賠償金の内容や金額はそれぞれの被害者の方の状況により異なりますが、どんな項目でどれくらいの金額が受け取れるのか、参考にしてください。

①高次脳機能障害で後遺障害1級、約2億3293万円の賠償金が認められた事例

オートバイで交差点を通過中に信号無視の自動車に衝突されたAさん(45歳男性)は脳挫傷の重傷を負い、治療後も重度の高次脳機能障害や右半身麻痺の後遺症が残ってしまいました。

常時介護が必要な状態ということで後遺障害1級1号(要介護)に認められましたが、賠償金額については保険会社とのあいだで裁判になり、判決では下記の賠償金が認められらました。(平成22年10月 東京地裁判決)

項目 賠償金額
治療費 13万円
入院雑費 61万円
通院及び付添交通費 193万円
傷害慰謝料 370万円
付添費 214万円
休業損害 488万円
後遺障害慰謝料 3000万円
逸失利益 8331万円
将来の付添介護費 8747万円
車椅子代 130万円
車両改造費 210万円
自宅改造費 890万円
仮住まい・引越費用 146万円
家族への慰謝料 500万円
合計 2億3293万円

②高次脳機能障害で後遺障害2級、約1億4810万円の賠償金が認められた事例

オートバイと自動車との事故で脳挫傷などの重傷を負い意識不明の重体となったBさん(38歳男性)は、入院中に高次脳機能障害の診断を受けました。3年以上の治療やリハビリテーションを行いましたが、無気力状態が続き、食事・入浴・排便など生活の全てにおいて家族による介護が必要な状態でした。

家族による介護の必要性については裁判で争われましたが、被害者側の主張どおり後遺障害2級(要介護)が認められました。判決による賠償金額は以下のとおりです。(平成29年4月東京地裁判決)

項目 賠償金額
治療費 1162万円
入院付添看護費 183万円
通院付添費 31万円
入通院雑費 53万円
休業損害 1217万円
傷害(入通院)慰謝料 376万円
後遺障害慰謝料 2800万円
逸失利益 4965万円
将来介護費 3105万円
成年後見人報酬 411万円
合計 1億4810万円

③高次脳機能障害で後遺障害7級(併合6級)、約8544万円の賠償金を獲得した事例

オートバイを運転中に車線変更してきた自動車に巻き込まれ、脳挫傷等で3日間意識不明だったCさん(31歳男性)は、事故から4ヶ月後に退院すると物忘れがひどいことを実感したそうです。

アズール法律事務所のサポートにより、高次脳機能障害の検査を受けたことで後遺障害7級(腕と耳にも後遺症があり併合6級)に認定されました。保険会社との交渉の結果、獲得した慰謝料などの賠償金額は以下のとおりです。(平成30年アズール法律事務所)

項目 賠償金額
治療費 265万円
入通院雑費等 24万円
休業損害 554万円
傷害(入通院)慰謝料 290万円
後遺障害慰謝料 1180万円
逸失利益 6231万円
合計 8544万円

まとめ

「高次脳機能障害」は交通事故による後遺症の中でも深刻なもののひとつです。
保険手続きをアズール法律事務所にご依頼いただいた「高次機能障害」の被害者の方々やご家族も、本当に大変な思いをされていらっしゃいます。

それだけに将来のことまでを見据えて、しっかりと慰謝料などの賠償金を受け取ることが大切です。
後遺障害等級は1級~9級が認定されますが、等級が一つ上がるだけで、支払われる金額は数千万円違うこともあります。ですから金額の交渉だけでなく、等級をしっかり取るということも非常に重要になります。

これまで、アズール法律事務所では数多くの「高次脳機能障害」の被害者の方々とともに、保険会社と闘ってきました。そしてこれからも、被害者の方々が将来にわたって安心して暮らしていただけるよう、しっかりサポートさせていただくことをお約束します。