交通事故による脊髄損傷の慰謝料相場は?(全身麻痺・半身麻痺・片足麻痺)

脊髄(せきずい)とは、背骨の中を通る神経の束です。交通事故で背骨に衝撃を受けて脊髄が損傷すると、脳からの信号がそこから先の神経に伝わらなくなります。
その結果、手足が麻痺(まひ)したり、しびれが生じます。重傷の場合には全身麻痺や下半身麻痺といった極めて重い後遺症となる可能性があります。

そういった場合、慰謝料などの賠償金は総額で数億円にもなる可能性があります。ご家族の将来のためにも、しっかりとした金額を受け取ることがとても重要です。

脊髄損傷の慰謝料・賠償金の相場

「脊髄損傷」の賠償金額は被害者の方の年齢や状況により異なります。ここでは目安として、実際に裁判で認められた賠償金例をご紹介します。

事故の後遺症 賠償金合計  
脊髄損傷による全身麻痺・四肢麻痺 約2億5300万円 ※1
脊髄損傷による下半身麻痺・両足麻痺 約1億2660万円 ※2
脊髄損傷による片足麻痺 約7220万円 ※3

※1 被害者は23歳男性 脊髄損傷による全身麻痺で後遺障害1級(要介護):平成26年12月大阪地裁判決
※2 被害者は55歳男性 脊髄損傷による両下肢の完全麻痺で後遺障害1級(要介護):
平成25年6月名古屋地裁判決
※3 被害者は27歳男性 脊髄損傷による片足麻痺等で後遺障害5級:平成12年5月東京地裁判決

慰謝料などの金額は後遺症がどれほど重いかを表す「後遺障害等級」によって決まります。まずはしっかりと「後遺障害等級」の認定を受けることが必要です。

少しでも高い等級に認定されるためには「専門医による的確な検査」を早めに受けて、証拠となる画像を撮影すること。そして交通事故に精通した「弁護士を通じて後遺障害等級の認定審査を受ける」ことが有効です。

慰謝料増額のカギは担当医師と弁護士の連携
慰謝料増額のカギは医師と弁護士の連携

最終的な賠償金の金額は、相手側の保険会社との示談交渉や裁判によって決まります。そして賠償金が高額になるほど交渉は難しくなります。しっかりとした弁護士をつけて交渉をしないと、十分な賠償金を受け取ることはできないと言っても良いでしょう。
まずは、なるべく早いタイミングで弁護士に相談して、担当医師と連携してもらうことが大切になります。

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・脊髄損傷とはどういう症状なのかわかります。
・脊髄損傷の後遺障害等級がわかります。
・実際の賠償金の内容や交渉方法がわかります。

脊髄損傷とは

脊髄損傷(せきずいそんしょう)というのは、読んで字のごとく「脊髄」が外部からの衝撃で損傷してしまうことです。脊髄がダメージを受けることで、脳と身体の各部をつなぐ神経が切断されてしまうため、手足や身体の感覚がなくなったり、動かすことができなくなる、いわゆる麻痺などの症状が生じます。

脊髄の意味と場所

「脊髄(せきずい)」というのは、背骨の中を通る神経の束のことです。
似た言葉の「脊椎(せきつい)」は背骨そのものを指すので混同しないようにしてください。また首の骨から尾てい骨までの背骨全体を「脊柱(せきちゅう)」と呼ぶこともあります。

背骨の中には「脊柱管(せきちゅうかん)」と呼ばれる管があり「脊髄」はその中を通って脳と身体の各部を繋いでいます。「脊髄」の神経を通じて、脳からの指令を身体の各部に送るとともに、各部の感覚情報などが脳に伝わります。

背骨の名称

なお、脊柱は「椎体(ついたい)」という骨が積み重なるようなかたちになっており、上から7個を「頚椎(けいつい)」、次の12個を「胸椎(きょうつい)」、次の5個を「腰椎(ようつい)」、最後の部分を「仙椎(せんつい)」と呼びます。
これに対応して中を通る「脊髄」も脳に近い方から「頸髄(けいずい)」「胸髄(きょうずい)」「腰髄(ようずい)」「仙髄(せんずい)」と呼ばれます。
診断書に「胸髄損傷」や「腰髄損傷」などと書かれる場合も基本的には「脊髄損傷」の一種と考えて良いと思います。

損傷した「脊髄」が脳に近い部分であるほど、影響を受ける範囲は広くなります。
たとえば、いちばん脳に近い「頸髄」の1~3番目が損傷した場合には、手足だけでなく、呼吸をするための横隔膜(おうかくまく)にも麻痺が生じるため、自力で呼吸することができなくなってしまいます。

脊髄損傷の原因

交通事故による脊髄損傷

身体に明確な麻痺が残るほどの脊髄損傷の多くは交通事故によるものです。

  • 歩行中の事故で尻もちをついた衝撃で背骨を骨折
  • 自転車やバイクの事故で転倒した衝撃で背骨を骨折
  • 運転中に追突された衝撃で背骨を骨折

背骨の骨折がすべて脊髄損傷につながるわけではありません。しかし脊髄を保護する役割の背骨が大きなダメージを受けた場合、中を通る脊髄が損傷する確率は高くなります。

背骨の骨折は直接横方向の衝撃を受けた場合でも生じますが、いわゆる尻もちをついたような縦方向の衝撃でも背骨が潰れるように骨折してしまうことがあります。
特にご高齢の方などで骨そのものが弱くなっている場合には注意が必要です。

中心性脊髄損傷(非骨傷性脊髄損傷)

「中心性脊髄損傷(非骨傷性脊髄損傷)」というのは、背骨に骨折などの損傷がないのに、中を通る脊髄がダメージを受けて損傷してしまうことを言います。
たとえば交通事故で首がガクンとなるような衝撃を受けたとき、首の骨が可動域を超えて無理に曲げられたために、骨の中を通る「脊髄」が損傷してしまうというようなケースがあります。

「中心性脊髄損傷」では骨には損傷が見られないので、レントゲンでは確認することができません。また、その多くは「脊髄」の一部が損傷した「不完全損傷」のため、完全麻痺などの明確な症状が出ないため、見落とされやすく注意が必要です。

事故後に手足に強いしびれがある場合や、手先がうまく動かないなどの症状がある場合には単なる「むち打ち(頚椎捻挫)」ではない可能性があります。早めに専門医による診断を受けるようにしてください。

脊髄損傷の症状

「脊髄損傷」には脊髄が完全に断裂して、脳との伝達機能が完全に断たれてしまう「完全損傷」と、脊髄が無理に曲げられるなどして、一部の伝達機能だけが失われる「不完全損傷」とがあります。

脊髄の完全損傷の症状

脊髄の「完全損傷」となった場合は、脳と身体の各所との信号伝達が断たれてしまうため、手足や体幹の運動機能が失われます。排尿や排便についても自力ではできなくなる場合があります。また、各所からの感覚情報も伝達できなくなるため、手足や体幹の感覚機能も失われます。つまりは「動かない、感じない」という状態となります。いわゆる完全麻痺です。
また、場合によっては、自律神経系も断たれてしまうため、心肺をはじめとする内臓の動きや、体温調節などの機能にも深刻な影響が生じます。

「脊髄損傷」による麻痺が身体のどの範囲に及ぶかは、脊髄のどの部位で損傷したかによります。脊髄の損傷した部分が脳に近いほど、麻痺の範囲は広く全身に及びます。
逆に脊髄の脳から遠い部分を損傷した場合は、下半身の麻痺のみとなる可能性が高くなります。

脊髄の不完全損傷の症状

脊髄の「不完全損傷」は、脊髄の神経の一部は損傷したものの、一部の機能は残っている状態です。
ある程度の運動機能が残り「なんとか動かせる」ものから、知覚機能だけが残り「感じるけど動かない」ものまで症状はさまざまです。「しびれ」や「けいれん」が生じる場合もあるようです。

脊髄損傷による麻痺の分類

交通事故での「脊髄損傷」で生じる「麻痺」の範囲や程度はさまざまで、ケースごとに千差万別です。しかし後遺障害等級の認定にあたっては、麻痺の範囲を4つ(四肢麻痺、片麻痺、対麻痺、単麻痺)に、麻痺の程度を3つ(高度、中等度、軽度)に分類して目安となる基準を定めています。

麻痺の範囲

四肢麻痺
(ししまひ)
両方の腕(両上肢)と両方の足(両下肢)が麻痺した状態
片麻痺
(かたまひ)
左右どちらかの腕と足(片側の上肢と下肢)が麻痺した状態
対麻痺
(ついまひ)
両方の腕(両上肢)または両方の足(両下肢)が麻痺した状態
単麻痺
(たんまひ)
片方の腕(片上肢)または片方の足(片下肢)が麻痺した状態

麻痺の程度

高度 腕(上肢)または足(下肢)の運動性・支持性がほとんど失われ、基本動作(下肢においては歩行や立位、上肢においては物を持ち上げて移動させること)ができないものをいいます。

「高度」麻痺の具体例

●完全強直又はこれに近い状態にあるもの
●上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの、またはこれに近い状態にあるもの
●下肢においては、三大関節のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの、またはこれに近い状態にあるもの
●上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの
●下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの


中等度 腕(上肢)または足(下肢)の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限があるものをいいます。

「中等度」麻痺の具体例

●上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができないもの、または障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの
●下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖または硬性装具なしには階段を上ることができないもの
●下肢においては、障害を残した両下肢を有するため杖または硬性装具なしには歩行することが困難なもの


軽度 腕(上肢)または足(下肢)の運動性・支持性が多少失われており、基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているものをいいます。

「軽度」麻痺の具体例

●上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの
●下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの
●下肢においては、障害を残した両下肢を有するため杖又は硬性装具なしには階段を上ることができないもの


参照:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/11/s1120-10g3.html

麻痺の後遺障害等級

「脊髄損傷」による後遺障害等級は麻痺の「範囲」と「程度」によって目安が定められています。わかりやすく表にまとめたので参考にしてください。

麻痺の範囲 麻痺の程度 後遺障害等級
四肢麻痺 高度 1級(要介護)の可能性あり
中等度 1級(要介護)、2級(要介護)の可能性あり
軽度 2級(要介護)、3級の可能性あり
対麻痺 高度 1級(要介護)の可能性あり
中等度 1級(要介護)、2級(要介護)、3級の可能性あり
軽度 5級の可能性あり
単麻痺 高度 5級の可能性あり
中等度 7級の可能性あり
軽度 9級の可能性あり
その他 軽微な麻痺、感覚傷害 12級の可能性あり

認定された後遺障害等級によって、受け取れる慰謝料などの金額が変わってきます。
各等級のくわしい内容については、このページの「脊椎損傷の後遺障害等級」をご覧ください。

脊髄損傷の診断方法

脊髄損傷かどうかの検査は、①画像診断(XP・CT・MRIなど)、②神経学的診断、③電気生理学的検査(脊髄誘発電位・体性感覚誘発電位)などにより行われます。

脊髄損傷に対する画像診断

脊髄損傷を診断するために最もよく使用されるのが画像診断です。XP(レントゲン)やCTでは、主に骨などの固い部位の損傷が確認できます。具体的には骨折・脱臼の有無、椎体の変形などです。

これに対してMRIでは軟部組織の損傷や変化を確認できます。具体的には脊髄の損傷の度合いや椎間板の脊髄への圧迫・じん帯の損傷の有無などです。

MRI(磁気共鳴画像診断装置)

脊髄損傷に対する神経学的診断

神経学的診断では、手足の動き・感覚障害の有無・深部腱反射・肛門付近の筋肉の検査(括約筋機能検査)などが行われます。

脊髄損傷に対する電気生理学的検査

電気生理学的検査は、筋電図、神経伝導検査などによる末梢神経・筋疾患の診断や、脳波・誘発電位などによる中枢神経疾患の診断のための検査です。脊髄機能がどの程度損傷しているか、どの部分が損傷しているかなどを検査します

脊髄損傷の治療とリハビリ

急性期の治療

「脊髄損傷」の場合は事故の瞬間だけでなく、その後の処置の間にも損傷が広がるリスクがあります。受傷から治療を開始するまでの時間により、麻痺などの障害の程度が変わる場合があるので、できるだけ速やかに治療に入ることが重要です。
具体的にはギプスが装具による脊椎の固定、手術や投薬により脊髄を圧迫している原因を取り除くなどの治療が行われます。

脊髄損傷の受傷直後は、一時的なショックで手足が完全麻痺し全く動かせない場合もありますが、3日くらい経過すると感覚が戻ることが多いようです。
1週間を過ぎても感覚が戻らないようであれば麻痺が残る可能性も出てきます。このため受傷直後は完全麻痺になるか不完全麻痺かの判断ができません。

慢性期のリハビリテーション

麻痺が残ってしまった場合は、リハビリテーションに進むことになります。
リハビリでは、麻痺してしまった部分をリカバリーするためのトレーニングを行っていきます。下半身麻痺であれば、上半身の機能を使って自分の体を持ち上げるトレーニングや、着替えができるようなトレーニングを行います。また排泄が困難な場合は、排尿等のトレーニングなども行い、日常生活に復帰することを目指します。

全身や半身の麻痺をともなう「脊髄損傷」では長期の入院が必要となります。
ただ、現在の医療制度では通常の病院に長期間入院することは困難で、通常は1〜2ヶ月を過ぎれば退院を迫られます。
そのため、交通事故で「脊髄損傷」と判断された場合、専門的に受け入れてもらえる病院を探す必要があります。

現在、脊髄損傷を専門に扱う病院としては、国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)、国立病院機構村山医療センター(東京都武蔵村山市)、総合せき損センター(福岡県飯塚市)、北海道せき損センター(北海道美唄市)などがあります。

そのほか、各地のリハビリテーション病院でも脊髄損傷専門の科があります。
脊髄損傷を専門的に扱う各地の病院は下記のページをご覧ください。

脊髄損傷からの回復

脊髄は脳組織と同じく中枢神経組織です。したがって、脳が一度損傷すると再生することができないのと同様に、脊髄も一度損傷すると再生することはありません。

ただし、末端の神経組織は再生することがあります。したがって脊髄ではない末端の神経細胞の損傷により麻痺が生じているのであれば、回復する可能性があると言えます。

交通事故による麻痺の場合、一般的に事故から1年間は回復の可能性がゼロではないと言われています。ただ、実際には半年以内に機能の回復が見られない場合は回復は難しくなると考えられます。

その場合は、後遺障害として認定を受けて賠償金を受け取り、ご本人とご家族の将来の生活をしっかりと立て直すことが大事になります。この部分に関しては法律的なサポートが書かせません。交通事故を専門的に扱う弁護士がお役に立てると思います。

脊髄損傷の慰謝料・賠償金

交通事故での「脊髄損傷」によって麻痺などの後遺症が残った場合は、相手側の保険会社等から慰謝料などの賠償金を受け取ることができます。

麻痺の範囲や程度によって金額は変わってきますが、症状が重い場合は合計1億5000万円以上の賠償金を受け取った例もあります。
実際にどのような賠償金を受け取れるのか見てみましょう。

治療費・休業損害・傷害(入通院)慰謝料など

交通事故による「脊髄損傷」の治療にかかる費用はすべて相手側の保険会社等から支払われるのが原則です。また、治療で仕事を休むことによる減収についても「休業損害」として支払われます。さらにケガの治療に伴う精神的苦痛に対する賠償として「障害慰謝料(入通院慰謝料)」が入通院の期間に応じて支払われます。

項目 内容
治療費 入院費用を含め、直接保険会社から実費が病院に支払われます。
おむつ・松葉杖・車椅子代など 実費を請求可能です。
休業損害 休業した日数分の金額が毎月支払われます。
交通費 通院のための交通費は実費が支払われます。タクシー代や付き添いのための交通費は交渉により認められる場合があります。
傷害慰謝料(入通院慰謝料) ・入院1ヶ月につき約50万円・通院1ヶ月につき約25万円※実際の金額は赤い本の入通院慰謝料表(別表1)によります

ただし、これは弁護士が入って「弁護士基準」で保険会社と交渉した場合の話です。保険会社にまかせた場合は、この通り支払われることはまずないと言って良いでしょう。

後遺障害慰謝料

「脊髄損傷」で麻痺などの後遺症が残った場合は、相手側の保険会社等から「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。これは後遺症の程度に応じて認定される後遺障害等級によっておおよその金額が決まっています。

「脊椎損傷」で認定される可能性のある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の金額は以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料(弁護士基準)
1級(要介護) 2800万円
2級(要介護) 2370万円
3級 1990万円
5級 1400万円
7級 1000万円
9級 690万円
12級 290万円

ただし、この金額は弁護士のサポートを受け、保険会社との交渉を「弁護士基準」で行なった場合のものです。保険会社にまかせた場合の提示額はこの半分以下になってしまう場合も少なくありません。

逸失利益

「脊髄損傷」により身体に麻痺が残った場合、事故の前と同じように仕事をして収入を得るのは難しくなります。場合によっては全く仕事ができなくなって収入がゼロになってしまうことも考えられます。
そうした失われてしまうであろう将来の収入は「逸失利益」として、相手側の保険会社に請求できます。数十年分の収入額ということになる場合もありますが、基本的には示談成立時に一括で支払われます。

逸失利益の計算式

基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(労働能力喪失期間による)

「逸失利益」は上の式で計算されます。ちょっと難しい言葉が並んでいますが、この計算式自体は弁護士でも保険会社でも違いはありません。

しかし計算のベースとなる「基礎収入」をいくらに設定するか、後遺症が仕事に与える影響(労働能力喪失率)をどのくらいと考えるか、事故がなければあと何年働くことができたと考えるか(労働能力喪失期間)などについては、弁護士と保険会社の意見が割れることが多くなります。

保険会社に任せた場合は、なるべく支払い額を少なくしたいという思惑から、十分な「逸失利益」を認めてくれないことが多々あります。

これに対して弁護士が入った場合は、被害者の方が受け取るべき正当な金額を主張します。そのため「逸失利益」についても、弁護士に依頼すると有利になる場合がほとんどです。

将来介護費・住宅改造費・車両購入費など

「脊髄損傷」の場合、麻痺の程度によっては、自力で食事や排泄などを行うことができなくなるため、これから先の生活では介護が必要になります。ヘルパーや介護士などの専門の人を雇う場合はもちろん、家族が仕事を休んで介護をする場合も「将来介護費」として今後の介護費用を相手側の保険会社に請求することができます。

車椅子と住宅イメージ

また下半身の麻痺の場合には、車椅子で移動できるように家を改造したり、車椅子で乗り降りできる自動車を新たに購入する必要があるかもしれません。こうした費用についても「住宅改造費」「介護用車両購入費」として相手側の保険会社に請求することができます。
まだ若い方が被害者の場合は、自動車の買い替えなども考慮しておく必要があるでしょう。

これらの費用を受け取るためには、相手側の保険会社に対して的確な請求をして、しっかりと交渉する必要があります。ただ待っているだけで保険会社から支払われる…といことはほとんど無いと言ってもよいでしょう。

しかし、被害者の方からすると、何をどのように請求したらよいのかわからないというのが現実ではないでしょうか。こうした交渉についても、実績がある弁護士にご相談いただくことで、漏れなく保険会社に請求することが可能になります。

これらの積み重ねで、弁護士が入った場合の被害者の方が受け取る最終的な賠償金は、保険会社の提示額の数倍になることもめずらしくありません。

脊椎損傷の後遺障害等級

「脊髄損傷」の後遺症で「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」を受け取るためには「後遺障害等級」の認定を受ける必要があります。

「脊髄損傷」で認定される等級と判断基準は以下の通りです。

後遺障害等級:第1級1号(要介護)

第1級1号
(要介護)
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
具体例 ●「高度」の「四肢麻痺」
●「高度」の「対麻痺」
●「中等度」の「四肢麻痺」であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
●「中等度」の「対麻痺」であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約2800万円
労働能力喪失率 100%

※麻痺の「高度」「中等度」「四肢麻痺」「対麻痺」については、このページの「脊髄損傷による麻痺の分類」をご参照ください。

後遺障害等級:第2級1号(要介護)

第2級1号
(要介護)
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
具体例 ●「中等度」の「四肢麻痺」が認められるもの
●「軽度」の「四肢麻痺」であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
●「中等度」の「対麻痺」であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約2370万円
労働能力喪失率 100%

※麻痺の「中等度」「軽度」「四肢麻痺」「対麻痺」については、このページの「脊髄損傷による麻痺の分類」をご参照ください。

後遺障害等級:第3級3号

第3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの
具体例 ●「軽度」の「四肢麻痺」が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの
●「中等度」の「対麻痺」が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約1990万円
労働能力喪失率 100%

※麻痺の「中等度」「軽度」「四肢麻痺」「対麻痺」については、このページの「脊髄損傷による麻痺の分類」をご参照ください。

後遺障害等級:第5級2号

第5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
具体例 ●「軽度」の「対麻痺」が認められるもの
●片足に「高度」の「単麻痺」が認められるもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約1400万円
労働能力喪失率 79%

※麻痺の「高度」「軽度」「対麻痺」「単麻痺」については、このページの「脊髄損傷による麻痺の分類」をご参照ください。

後遺障害等級:第7級4号

第7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの
具体例 ●片足に「中等度」の「単麻痺」が認められるもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約1000万円
労働能力喪失率 56%

※麻痺の「中等度」「単麻痺」については、このページの「脊髄損傷による麻痺の分類」をご参照ください。

後遺障害等級:第9級10号

第9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
具体例 ●片足(一下肢)に「軽度」の「単麻痺」が認められるもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約690万円
労働能力喪失率 35%

※麻痺の「軽度」「単麻痺」については、このページの「脊髄損傷による麻痺の分類」をご参照ください。

後遺障害等級:第12級13号

第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
具体例 ●運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
●運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの
後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
約290万円
労働能力喪失率 14%

麻痺や感覚障害については、本人の自覚症状だけでは後遺障害とは認めらません。必ず医師による診断およびMRI画像などで、交通事故による「脊髄損傷」があることの証明が必要になります。

脊椎損傷の示談交渉

「脊髄損傷」は事故に遭ったご本人だけでなく、ご家族の今後をも大きく左右します。しかし相手側の保険会社はすんなりと最高額の慰謝料などの賠償金を支払ってくれるわけではありません。
手足や身体に麻痺の後遺症が残った場合は、賠償金も高額になります。それだけに支払う側の保険会社としても、なるべく金額を抑えようとする力が強く働くことが考えられます。

そうした状況の中で、しっかりとした賠償金を獲得するには、やはり弁護士による法律的なサポートが欠かせません。
弁護士に依頼することで、保険会社とのやりとりはすべて法律事務所に任せられます。被害者の方がもっとも有利になることを第一に考えて対応しますので、安心して治療やリハビリに取り組むことができるようになります。

示談交渉の流れ

交通事故の被害で「脊髄損傷」による後遺症が残った場合の示談交渉の流れを簡単にまとめたのが下の図になります。

交通事故での示談交渉の流れ
交通事故での示談交渉の流れ

「事故発生」から半年~1年半ほどの「治療」を行ったうえで「これ以上の劇的な回復は見込めない」と医師が判断することを「症状固定」といいます。その後、担当の医師が発行した後遺障害診断書とそれまでの治療経過、弁護士の意見書などを揃えて、後遺障害等級認定の申請を行います。申請から結果が出るまで、おおよそ3~6ヶ月程度かかります。

後遺障害等級が認定されたら、最終的な慰謝料などの金額について保険会社と「示談交渉」を行います。納得できる金額の提示があれば示談成立となりますが、どうしても納得できない場合は裁判をすることになりま す。

後遺障害等級の認定

ひとつ大きなポイントとなるのが「後遺障害等級」の認定手続きです。どの等級に認定されるかで、慰謝料や逸失利益などの賠償金の金額が大きく変わってきます。

後遺障害等級の認定では提出された書類によって審査が行われます。多数の書類の提出が求められますが、重要なのは医師が発行する「後遺障害診断書」とMRIなどの「画像」です。

「後遺障害診断書」は治療を担当した医師に書いてもらうことになります。はっきりと後遺症について記されているのが理想ですが、あいまいな表現になっていることも多いので注意が必要です。ケガを治すのが医師本来のしごとなので「治らない」と明記するのをためらうケースもあるようです。

一度書いてもらった診断書を書き直してもらうことは難しいので、事前に弁護士と記載内容について打合せができれば安心です。また、たとえ「後遺障害診断書」を書いてもらった後でも、弁護士が内容を確認することで、添付資料で補足するなどの対策をとることができます。

「脊髄損傷」の後遺障害等級の認定では特に「画像」が重要になります。実際に手足に麻痺が生じていても、それが事故による「脊髄損傷」によるものであることが画像で確認できないと後遺障害等級が認められない場合があります。
神経の束である「脊髄」の損傷を確認するためには、MRI(磁気共鳴画像診断装置)で撮影された画像が最も適しています。事故直後の画像と症状固定時の画像で、脊髄の損傷箇所が確認できるのが理想的です。

このように後になって必要となる画像についても、経験のある弁護士であれば的確なアドバイスすることができます。そうした意味でも、なるべく早い段階で弁護士への相談をご検討いただければと思います。

保険会社との交渉

後遺障害等級が認定されても、実はそれだけでは賠償金を受け取ることはできません。慰謝料などの賠償金(保険金)を実際に支払う相手側の保険会社と交渉して金額を決定する必要があります。

金額の決め方は2種類です。被害者の方が直接に保険会社と交渉する方法と、弁護士が代理人として保険会社と交渉する方法があります。どちらを選ぶかによって受け取れる金額が大きく違ってきます。

被害者の方が直接に保険会社と交渉する場合、ベースとなる金額は「任意保険基準」という保険会社が独自に決めた基準で決定されます。これは総額で見ると、ほぼ最低限とされている賠償額か、それよりは少し多い程度であることがほとんどのようです。

これに対して、弁護士が保険会社と交渉する場合には「弁護士基準(裁判基準)」でベースの金額を計算します。これは、交通事故の裁判での判決をもとにつくられた基準です。被害者の方が本来受け取るべき金額の目安ともいえるでしょう。
弁護士が入って交渉した場合は、保険会社と直接交渉した場合に比べて、慰謝料などの賠償金は大幅に増額することがほとんどです。実際に2倍以上の金額が受け取れることも珍しくありません。

脊椎損傷の慰謝料・賠償金の事例

実際に被害者の方の代理人として弁護士が入って示談交渉や裁判を行い、高額の賠償金を獲得した事例を紹介します。
賠償金の内容や金額はそれぞれの被害者の方の状況により異なりますが、どんな項目でどれくらいの金額が受け取れるのか、参考にしてください。

四肢麻痺で約2億6310万円の賠償金を獲得した事例

オートバイを運転中に無免許運転の乗用車に衝突され重傷を負ったAさん(23歳男性)は脊髄(頸髄)の損傷により両足が完全麻痺、両腕もほとんど動かないという後遺症が残ってしまいました。
後遺障害1級(要介護)に認定されましたが、保険会社は十分な賠償金を支払おうとしなかったため弁護士の判断で最終的に裁判が行われました。裁判官が認めた賠償金額は以下の通りです。(平成26年12月大阪地裁判決

項目 賠償金額
治療費 1,567,150円
入院雑費 279,000円
将来雑費 1,577,457円
入院付添費 1,209,000円
将来介護費 82,367,214円
福祉用具費 16,195,733円
福祉車両購入費 5,407,050円
家屋改造費 9,380,500円
その他費用 284,230円
傷害慰謝料 3,000,000円
後遺障害慰謝料 30,000,000円
逸失利益 111,847,914円
合計 263,115,248円

下半身麻痺で約1億2660万円の賠償金を獲得した事例

オートバイを運転中に乗用車に衝突され重傷を負ったBさん(55歳男性)は1年以上の治療を受けましたが、脊髄損傷により両足の完全麻痺の後遺症が残ってしまいました。
後遺障害1級(要介護)に認定されましたが、保険会社は十分な賠償金を支払おうとしなかったため弁護士の判断で最終的に裁判が行われました。裁判官が認めた賠償金額は以下の通りです。(平成25年6月名古屋地裁判決

項目 賠償金額
治療費 10,449,190円
転院費用 40,010円
入院雑費 865,500円
付添看護費 3,635,100円
付添看護経費 622,364円
装具・車椅子購入費 1,785,336円
障害車両購入費 1,051,020円
住宅改造費 10,291,700円
休業損害 6,063,593円
傷害慰謝料 3,470,000円
後遺障害慰謝料 28,000,000円
逸失利益 24,700,330円
将来介護費 32,539,312円
将来の車椅子代 2,040,400円
将来の障害車両代 1,040,235円
合計 126,594,090円

 

片足麻痺で約7220万円の賠償金を獲得した事例

信号無視の自動車と衝突して重傷を負ったCさん(27歳男性)は1年以上の治療を受けましたが、頸髄の不完全損傷により左脚の麻痺等の後遺症が残ってしまいました。
後遺障害5級に認定されましたが、保険会社は十分な賠償金を支払おうとしなかったため弁護士の判断で最終的に裁判が行われました。裁判官が認めた賠償金額は以下の通りです。(平成12年5月東京地裁判決

項目 賠償金額
治療費 11,639,803円
入院付添費 865,200円
入院雑費 685,200円
交通費 713,660円
器具購入費 251,275円
車椅子代 3,880,000円
休業損害 3,679,130円
傷害慰謝料 3,000,000円
後遺障害慰謝料 11,000,000円
逸失利益 36,567,201円
合計 72,281,469円

※掲載された事例は、公開されている判例をもとに構成されたものです。本事務所により提訴された事件ではありません。また特定を避けるため、実際の事例とは若干異なった数値・内容を記載をしています。ご了承ください。

まとめ

「脊髄損傷」は交通事故によるケガの中でも最も深刻なもののひとつです。ほとんどのケースで身体の麻痺などの後遺症が残るため、将来のことまでを見据えて、しっかりと慰謝料などの賠償金を受け取ることが大切です。
後遺障害等級は麻痺の程度により1級~12級に認定されますが、同じ等級でも受け取れる賠償金の金額は、保険会社との交渉のしかたによって大きく変わります。

交通事故による「脊椎損傷」について実績のある弁護士であれば、治療やリハビリから賠償金の請求まで、全体を見渡したサポートが可能です。交通事故でどうかこれ以上の後悔をしないためにも、できるだけ早く信頼できる弁護士に相談をしてください。