
腰椎や胸椎の圧迫骨折は、交通事故での被害によく見られるケガのひとつです。強い衝撃で背骨が押しつぶされる骨折ですので、なかなか完治することが難しく、後遺症が残ってしまうことが多い骨折でもあります。
この記事では、交通事故による腰椎圧迫骨折や胸椎圧迫骨折の方に知っていただきたい情報を、弁護士の立場から詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
なお、交通事故による被害で後遺症が残った場合、慰謝料などの保険金を受け取ることができますが、手続きのしかたによって、被害者の方が受け取る金額は大きく違ってきます。
弁護士による法律的なサポートを受けると、同じ後遺障害でも賠償金が2〜3倍に増額することも珍しくありません。低い賠償金で泣き寝入りすることのないよう、ぜひ詳しい弁護士に相談するようにしてください。
アズール法律事務所は交通事故の被害者を徹底サポート
圧迫骨折で正当な慰謝料・保険金を受け取るには弁護士によるサポートが欠かせません。アズール法律事務所では全国の交通事故被害者の方をサポートしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
目次
腰椎圧迫骨折・胸椎圧迫骨折とは
そもそも、腰椎や胸椎の圧迫骨折とはどんな骨折なのでしょうか?
圧迫骨折は、背骨を構成する椎体(ついたい)に圧力がかかることで生じる骨折のことをいいます。椎体が潰れたようになってしまう場合と、椎体の一部が欠けたようになる場合があります。

人間の体は背骨、医学用語でいう「脊柱(せきちゅう)」によって支えられています。脊柱は、椎体(ついたい)と呼ばれる輪のような骨を積み上げた構造で、内部には神経が通っています。骨と骨の間は、椎間板(ついかんばん)、椎間関節(ついかんかんせつ)、靭帯(じんたい)で繋がれています。

脊椎は上から順に頸椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんつい)と名付けられていますが、中でも胸椎と腰椎は体全体を支えるパーツのため、普段から大きな力がかかっています。そこに外部から強い衝撃が加わると、耐えきれずに骨が潰れてしまうのです。
圧迫骨折の原因
交通事故で腰椎や胸椎の圧迫骨折が起こりやすいのは、自転車やバイクに乗っているときに追突され、転倒したケースです。落下時に背骨に大きな圧力がかかり、圧迫骨折が生じます。また、歩行者でも車に追突されて背中や腰に強い衝撃を受けると、圧迫骨折になりやすいと言えます。
なお、圧迫骨折は比較的高齢の被害者の方に多く見られます。これは加齢により骨密度が低く、骨がもろくなっていることが原因と考えられます。
特に骨粗しょう症の場合は、日常生活の中での軽い衝撃でも圧迫骨折が生じることがあります。その圧迫骨折が交通事故によるものなのか、事故以前からのものなのかが、しばしば交渉の争点となります。
圧迫骨折の症状
腰椎や胸椎の圧迫骨折による主な症状は、腰や背骨の強い痛みです。寝返りや起き上がりなどの動作時に強い痛みを感じることが多いようです。
また、圧迫骨折の進行によって神経障害が起こることがあります。具体的には、下半身に痛みやしびれなどの発生がみられます。
ただし注意しなければならないのは、交通事故で圧迫骨折が生じても、しばらくは痛みを感じないというケースがあることです。圧迫骨折による骨の変形が徐々に進行するためで、ある程度の期間が経ってから痛みやしびれを感じるようになります。
これは事故で衝撃を受けてもろくなった背骨の錐体が、その後の生活で圧力がかかることで徐々に潰れていくために発生します。約3〜6ヶ月かけて圧迫骨折が進行し、ある程度のところで安定します。
圧迫骨折の検査方法
圧迫骨折の診断には、他の骨折と同様にレントゲン(X線検査)が使われます。レントゲン画像で椎体の変形があるかどうかを確認します。
ただし、事故の衝撃でダメージを受けた背骨の椎体が、その後の生活で圧力を受けることで徐々につぶれていく「進行性の圧迫骨折」というケースもあります。そのような場合は事故直後のレントゲンでは圧迫骨折が確認できません。したがって、事故の状況や、その後の症状によって、CTやMRIによる検査を適宜行う必要があります。

圧迫骨折の治療
圧迫骨折の治療には「保存療法」と「手術療法」があります。大部分のケースでは保存療法が選ばれます。
保存療法ではコルセットなどで患部を固定し、薬などで痛みを抑えつつ、安静に過ごして症状が軽減するのを待つことになります。痛みがある程度のレベルまでに治まるまで、個人差はありますが、数ヶ月を要するとされています。
激しい痛みが改善改善してきたタイミングで、リハビリテーションを開始します。リハビリテーションとして行われるのは、腹筋や背筋を中心とした筋力トレーニング、およびストレッチです。
症状が重い場合や、痛みなどの神経症状がコントロールできない場合は医師の判断により手術療法を選びます。

手術には問題のある脊椎の部分をボルトや人工骨で固定することで安定をはかる「脊椎固定術」や、脊椎の椎弓の一部を切除して脊柱管を広げ圧迫を解除する「椎弓切除術」など、いくつかの術式があります。最近では、バルーンやセメントを使って椎体を再生する手術なども行わるようになりました。
いずれにしても、手術をする場合は入院が必要になり、被害者の方の負担も大きくなるので、その判断は慎重に行う必要があります。
圧迫骨折の後遺症
治療を行ったとしても、圧迫骨折で潰れた背骨の椎体が、完全に元通りに治ることは難しく、何らかの後遺症が残る可能性が高くなります。
腰椎や胸椎の圧迫骨折の後遺症として代表的なものとしては、腰や背骨に生じる局所痛や疼痛、神経が圧迫されることによって生じる手足の痺れや麻痺などが挙げられます。
また、背骨の変形により側弯(そくわん)や後弯(こうわん)などの姿勢の変化が生じる場合もあります。
交通事故の被害で生じた後遺症については、後遺障害として認定を受けて慰謝料などの保険金を請求することができます。圧迫骨折の場合はなるべく早いタイミングで、交通事故に詳しい弁護士に相談してするようにしてください。
圧迫骨折に関するよくあるお悩み
弁護士として交通事故を専門的に扱っていると、圧迫骨折に関して被害者の方からたくさんの相談をいただきます。その中から、特に重要だと思えるものを紹介します。
①治療費や交通費、休業損害…当面のお金を払ってもらいたい
腰椎や胸椎の圧迫骨折では、保存療法での治療となる場合が多く、期間は少なくとも数ヶ月に及びます。その間は、治療やリハビリの費用、通院するための交通費もかかるうえに、仕事ができず収入が減ってしまうことになり、金銭的につらくなる被害者の方も多いと思います。
本来こうした費用は、被害者の方の負担にならないように、加害者側の保険会社から毎月支払われるべきです。しかし実際には支払いを渋る保険会社が多いようで、「通院の交通費を払ってもらえない」「休業損害が認められない」というような相談をよくいただきます。
実はこういった場合は弁護士を通じて保険会社と交渉するのが有効です。本来はおかしな話なのですが、弁護士が介入すると、保険会社は態度を変えて交渉に応じるようになります。
また、当面の生活費などが必要な場合は、仮払い金というかたちで賠償金の一部を受け取ることも可能です。
どうかおひとりで悩まず、こうした交通事故の交渉に慣れた弁護士に相談してみてください。
②事故後の診断で圧迫骨折が見逃されてしまいました
腰椎や胸椎の圧迫骨折が生じるような交通事故の場合、負傷箇所が圧迫骨折だけということはまれで、頭部や手足も負傷していることが大多数です。そういった状況では、目に見えている部分の治療がどうしても優先されます。そして少しばかり背中や腰が痛むという症状があっても、その時点では圧迫骨折とは診断されないことがよくあります。
しかし、圧迫骨折は事故後に徐々に進行していく場合も多いので注意が必要です。
これは、事故で衝撃を受けてもろくなった背骨の錐体が、その後の生活で圧力がかかることで徐々に潰れていくことによるものです。約3〜6ヶ月かけて圧迫骨折が進行し、ある程度のところで安定します。
こうした圧迫骨折をしっかりと発見して慰謝料・保険金を請求するには、医師と弁護士の連携が必要になります。
事故後に背中や腰の痛みが続くようであれば、早めにレントゲンだけでなく、CTやMRIの撮影を行って、進行性の圧迫骨折がないか確認しましょう。特にMRIでは骨の内部がもろくなっている部分についてもはっきりと画像で確認できるので、非常に有効です。

上の画像はMRIで撮影したものです。丸で囲んだ骨(背骨の椎体)が台形に潰れて骨の内部にもダメージが生じていることがよくわかります。


上の2つの画像は同じ患者の方の圧迫骨折をCTとMRIとで撮影したものです。丸で囲んだ部分に骨が潰れてできた傷のようなものが確認できます。
圧迫骨折であることが確認できたら、医師にはその旨をしっかりと後遺障害診断書に記載してもらったうえで、証拠となる画像等の資料をしっかり揃えて後遺障害等級の認定を受けることが重要です。こうした手続は後遺障害に詳しい弁護士に依頼すれば、すべて任せることができます。
さらに、後遺障害等級が認定されれば、それに応じた慰謝料・保険金を弁護士を通じて請求することができます。まずは交通事故の後遺障害に詳しい弁護士に相談してみてください。
③交通事故による圧迫骨折であることを証明したい
腰椎や胸椎の圧迫骨折の原因として最も多いのは交通事故ではなく、加齢による骨粗しょう症等によるものです。歳をとることによって骨密度が低下していると、本人も気づかないうちに圧迫骨折が生じているということもあります。
問題になるのは、交通事故の後で圧迫骨折が見つかった場合に、それが事故によって生じた圧迫骨折なのか、事故以前から生じていた圧迫骨折なのか…ということです。
事故によって生じた圧迫骨折であれば、もちろん相手側の保険会社に慰謝料・保険金が請求できます。しかし、事故以前からあった圧迫骨折と判断されれば賠償の対象とはなりません。
特に高齢者の場合は「事故よりも前から圧迫骨折が生じていた」と保険会社が判断して賠償金の支払いに応じないケースが多くなります。
交通事故による圧迫骨折であることを証明するためには、事故直後にMRIの撮影を行うのが理想的です。MRIでは骨だけでなく、柔らかい組織の状態も確認できるので、損傷が新しいものなのか、以前からあったものなのか判断することが可能になります。
事故直後でなくとも、できるだけ早いタイミングでMRIの撮影を行うことで、事故と圧迫骨折の因果関係を証明しやすくなります。
交通事故による圧迫骨折であることを証明するためには、こうしたMRI画像などの証拠を揃えて保険会社と交渉する必要があります。こうした交渉の経験が豊富な弁護士に、ぜひ相談してみてください。
④保険会社から治療打ち切り(症状固定)の連絡があったのですが…
腰椎や胸椎の圧迫骨折の治療はほとんどの場合で保存療法となり、相当に重傷の場合をのぞいて手術をすることはありません。基本的にはコルセットなどで患部を固定して、安静を心がけながら痛みが軽減するのを待つということになります。
しかし、残念ながら潰れたり欠けたりして変形した骨は元には戻りません。つまりどんなに長い期間の治療を行っても完治することは難しいのです。
保険会社では治療を打ち切って「症状固定」とする時期の目安が決められています。交通事故による骨折の場合は、およそ6ヶ月で治療打ち切りとなり、保険会社から治療費が支払われなくなるケースが多いようです。
しかし被害者の方からは「まだ痛みが残っていて治療を続けたいのだがどうしたらよいか」という相談を多数いただきます。
治療の終了や症状固定を判断するのは、保険会社でも弁護士でもなく、あくまで担当の医師です。医師が必要と判断するのであれば、保険会社が何と言おうと治療を続けるべきでしょう。
そして弁護士を通して交渉することで、保険会社も治療の延長に応じる場合があります。もし応じてもらえない場合でも、健康保険などを使っていったん自分で治療費を立て替えて、後から賠償金の一部として請求することなども可能です。
一方、弁護士の視点で見ると、治療を終了して「症状固定」とするということは、現時点で残っている痛みや骨の変形は後遺障害だと確定させて、慰謝料・保険金の請求手続きに入るという意味を持ちます。慰謝料・保険金を請求するために「症状固定」は必ず踏まなければならないステップだと言えます。

ただし、症状固定にしたからと言って必ず後遺障害等級に認定されるというわけではありません。実際に非該当となるケースも数多く見られます。
腰椎や胸椎の圧迫骨折で後遺障害等級の認定を受けるには、後遺障害診断書の内容や、圧迫骨折の根拠となる画像、症状固定の時期、それまでの通院回数など、多岐にわたる判断資料を適切に揃えて申請する必要があります。
こうした手続きは、交通事故や後遺障害に詳しい弁護士にならすべて任せることができます。ぜひ一度相談してみてください。
⑤保険会社との手続きや交渉がわずらわしくて…
圧迫骨折の慰謝料・保険金を正当な金額で受け取るためには、加害者側の保険会社と交渉をすることは避けられません。
ですが、被害者の方にしてみれば、事故でケガをして病院に通うだけでも相当な負担なのに、相手側の保険会社からの問い合わせに対応したり、さまざまな手続きを行うのは、とても大きな負担になると思います。
実際、アズール法律事務所にご相談いただいた被害者の方からも「保険会社との対応が大変だった」という声が多く寄せられます。
こうした悩みを解決する手段としては、交通事故に詳しい弁護士に依頼するのがいちばん良い方法だと思います。
交通事故の処理に精通した弁護士であれば、保険会社との面倒な交渉や手続きはすべて任せることができます。被害者の方の立場に立って、最も良い結果になるように保険会社との交渉を行います。被害者の方は安心して治療や生活のリカバリに取り組むことが可能になります。
弁護士費用を心配される方もいらっしゃるかもしれません。ですが、交通事故の被害者の方であれば、弁護士によって増額する賠償金の一部を弁護士費用としていただくかたちになるので、総合的には金銭的にもプラスになります。

保険会社への対応で悩むようであれば、早めに交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
⑥圧迫骨折の慰謝料・保険金に納得できません
腰椎や胸椎の圧迫骨折は治療にも時間がかかり、骨折の中でも後遺症が残る可能性が高い骨折です。身体の重要な骨格である背骨に関する重いケガですので、被害者の方の負担はとても大きいものだと言えます。
その負担に見合うだけの慰謝料・保険金を当然受け取るべきなのですが、加害者側の保険会社はなかなかそれを支払おうとしないのが現実です。保険会社から慰謝料などの保険金の提示を受けて「納得できない」という被害者の方が多いのもうなづけます。
実は保険会社と弁護士では慰謝料などを算定する「基準」が異なり、同じ後遺障害でも支払われる金額に2〜3倍の差がつくことも珍しくありません。

腰椎圧迫骨折で認定される後遺障害6級、8級、11級について、自賠責保険基準と弁護士基準の「後遺障害慰謝料」の相場は下の表のとおりです。これだけでもかなりの金額差があることがわかります。
後遺障害等級 | 自賠責保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級 | 512万円 | 約1200万円 |
8級 | 331万円 | 約800万円 |
11級 | 136万円 | 約400万円 |
※「弁護士基準」での慰謝料等を受け取るためには、弁護士を通じて保険会社と交渉する必要があります。
保険会社から支払われる保険金(賠償金)には、後遺障害慰謝料のほかに逸失利益や休業損害なども加算されるため、実際の金額はもっと大きくなります。
実際にアズール法律事務所にご相談いただいた方の例を挙げると、11級7号の後遺障害に認定された方への、保険会社からの提示額は合計で約700万円でした。それが、弁護士が入ることで約1700万円にまで増額しました。

被害者の方が本来受け取るべき慰謝料・保険金を獲得するためには、やはり弁護士に相談いただくのがいちばんです。
⑦圧迫骨折による逸失利益が認めてもらえません
腰椎や胸椎の圧迫骨折で後遺障害に認定されると、慰謝料のほかに「逸失利益」を請求することができます。「逸失利益」というのは、後遺障害のせいで仕事に支障が出て、将来の収入が減ってしまうことに対する補償です。被害者の方の年齢や職業によっては、慰謝料よりも高額になります。
ところが保険会社は圧迫骨折に対しては、基本的に逸失利益を払おうとしません。特に多くの方が該当する「後遺障害11級7号」の場合は、必ずと言って良いほど逸失利益を大きく減額してきます。
「背骨の一部に変形が残ったところで収入に大きな影響はない」というのが保険会社のお決まりの主張です。
こういった保険会社の主張に対抗するためには、被害者の方のくわしい症状や仕事の内容などの資料を揃えて、論理的な交渉を行う必要があります。
実際にアズール法律事務所でも、被害者の方の就業状況をふまえ、過去の症例をもとに後遺症が将来の収入にどれほど影響するのかをきちんと整理して強く訴えることで、ようやく逸失利益が認められた事例がいくつもあります。
圧迫骨折での正当な逸失利益を獲得するためにはぜひ、こうした交渉についての経験が豊富な弁護士に相談するようにしてください。
圧迫骨折の後遺障害等級と認定基準
腰椎や胸椎の圧迫骨折の後遺症で慰謝料などの保険金を受け取るためには、後遺障害等級の認定を受けることが必要です。
後遺障害等級の認定を受けるには、少なくとも圧迫骨折による背骨の変形や損傷が、レントゲン、CT、MRI等の画像で確認できることが必要です。
逆に、背骨の変形や損傷が画像ではっきりと確認できれば、痛みの程度にかかわらず、後遺障害に認定される可能性が大きくなります。
交通事故による圧迫骨折の場合、大部分は「11級7号」という後遺障害等級に該当します。さらに重い後遺症の場合には8級や6級という後遺障害等級に認定されることもあります。
それぞれの等級に該当する後遺障害は以下のように定められています。
背骨の変形障害 | 11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
---|---|---|
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの | |
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの | |
背骨の運動障害 | 8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
それぞれの詳しい基準については、厚生労働省が労災保険の認定基準として公開している文書が参考になります。以下はその該当箇所の抜粋です。
出典:厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
11級7号:脊柱に変形を残すもの
「せき柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア)せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
(イ)せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く。)
(ウ)3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
8級相当:脊柱に中程度の変形を残すもの
せき柱に中程度の変形を残すもの」とは、エックス線写真等によりせき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア)後彎が生じているもの(減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上)
(イ)コブ法による側彎度が50度以上であるもの
(ウ)環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により、次のいずれかに該当するもの。
厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
a 60度以上の回旋位となっているもの
b 50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
c 側屈位となっており、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
6級5号:脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
「せき柱に著しい変形を残すもの」とは、エックス線写真、CT画像又はMRI画像(以下「エックス線写真等」という。)により、せき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア)せき椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。この場合、「前方椎体高が著しく減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であるものをいうこと。
(イ)せき椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。この場合、「前方椎体高が減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であるものをいうこと。
厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
8級2号:せき柱に運動障害を残すもの
「せき柱に運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア)次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
a頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
b頸椎又は胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの
c項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの(イ)頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの
厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
6級5号:脊柱に著しい運動障害を残すもの
「せき柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頸部及び胸腰部が強直したものをいう。
(ア)頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎圧迫骨折等が存しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
(イ)頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎固定術が行われたもの
(ウ)項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
後遺障害等級の取得方法
後遺障害の認定を受けるには「事前認定」と「被害者請求」という2つの申請方法があります。「事前認定」は交通事故の加害者が入っている保険会社に申請手続きしてもらう方法です。「被害者請求」とは被害者側が弁護士などを通じて申請の手続きをすることをいいます。
保険会社による手続き(事前認定)
「事前認定」では、すべての手続きを加害者側の保険会社が行います。被害者としては、手間がかからないことがメリットといえるでしょう。
しかし保険会社は、それほど熱心に申請手続きしてくれるわけではありません。認定に必要な資料が十分でないことも多く、等級が低く認定されてしまうケース、等級が認定されないケースもあります。

弁護士による手続き(被害者請求)
「被害者請求」はすべての手続きを被害者側が行うため、納得のいく結果を得やすいというメリットがあります。
しかしそのためには、申請書類をどう書いたらいいのか、どのような資料をそろえたらいいのか、といったさまざまなノウハウが必要になります。そのため、交通事故に精通した弁護士など、法律のプロに被害者請求の代行を依頼するのが一般的です。

異議申し立てについて
後遺障害等級認定の結果に納得がいかない場合、損害保険料率算出機構に書面で等級認定の再審査を求めることができます。「異議申し立て」と呼ばれる手続きです。
ただし、異議申し立てをしても等級変更が認められる確率は決して高くありません。損害保険料率算出機構が公表している資料にると5パーセント程度です。
しかも異議申し立ての結果が出るまでには、概ね3ヶ月以上の時間がかかります。すでに最初の等級認定までに3〜6ヶ月の時間がかかっているわけですから、それだけの時間をかけて等級変更が認められなかった場合、被害者の方は大きなダメージを受けることになります。
以上の理由から、むやみに異議申し立てをすることはおすすめできません。提出された資料に明らかな間違いや不足がある等、後遺障害等級認定の結果を覆す明確な事由がある場合のみ、異議申し立て手続きを検討するべきと考えています。
圧迫骨折の慰謝料・保険金
交通事故による腰椎や胸椎の圧迫骨折で、被害者の方が請求できる主な保険金(賠償金)項目は下記のとおりです。
- 治療費(治療関連費)
- 休業損害
- 障害慰謝料(入通院慰謝料)
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
圧迫骨折の治療費
交通事故による圧迫骨折の治療費は賠償金の一部として加害者側に請求できます。通常、治療費は加害者側の保険会社から直接病院に支払われます。
慰謝料などは示談が成立した後に一括で支払われますが、治療費については実際にかかった費用がその都度支払われます。
また、通院にかかった交通費や治療中に必要なコルセットやギプスの費用も賠償金の一部として請求することができます。
治療費が支払われるのは完治して治療が終了するまでか、後遺障害の手続きを進めるために「症状固定」とするまでです。症状固定の後では痛みが残っていても後遺障害として扱われるため治療費は支払われなくなります。
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交通事故の治療費について気をつけるべき7つのポイント
圧迫骨折の休業損害
休業補償とは、交通事故で仕事を休んだ分の補償です。交通事故のせいで、収入が減ってしまったという損害(休業損害)に対する賠償金ということになります。
交通事故による圧迫骨折で入院・通院となり、休んだ分給与が減らされてしまった、ボーナスが減額された、見込まれていた昇給がなくなった、諸手当が無くなった…など、収入の減収分を賠償するのが休業損害です。休業補償は毎月、保険会社から被害者に支払われます。
休業補償が支払われるのは治療が終了するまで、または症状固定までです。症状固定後の減ってしまった収入については逸失利益として示談がまとまった後に一括で支払われることになります。
休業補償の計算方法については、被害者の方が会社員なのか、自営業なのか、アルバイトなのか、主婦なのかによって異なります。詳しくは下記のページをご覧ください。
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休業補償とは?交通事故で仕事を休んだ補償を職業別に解説
圧迫骨折の障害(入通院)慰謝料
「傷害慰謝料」は交通事故でケガをさせてしまったことに対する慰謝料です。つまり「ケガをしたことによる精神的な苦痛に対する賠償」ということになります。
入院、通院の期間や回数に応じた金額が支払われることから「入通院慰謝料」とも呼ばれます。
ただし、同じ入院日数や通院期間でも、保険会社と弁護士では障害慰謝料の計算方法が異なり、その金額には大きな差が出ます。もちろん、より高額となるは「弁護士基準」です。
詳しくは下記のページをご覧ください。
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入通院慰謝料とは?計算方法や相場をQ&Aで解説
圧迫骨折の後遺障害慰謝料
「後遺障害慰謝料」は交通事故の後遺症を抱えて生きていくことに対する精神的苦痛に対して支払われます。
後遺障害慰謝料は認定された等級によって金額が決まります。ただし、同じ等級でも保険会社と弁護士では障害慰謝料の計算方法が異なり、その金額には大きな差が出ます。もちろん、より高額となるは「弁護士基準」です。
詳しくは下記のページをご覧ください。
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後遺障害慰謝料とは?損をしないためのポイントを解説
圧迫骨折の逸失利益
交通事故で後遺障害が残ったときの賠償金の中で最も金額が大きくなるのは、ケースにもよりますが「慰謝料」よりも「逸失利益」です。
「逸失利益」というのは、交通事故の後遺症が理由で、減ってしまう今後の収入に対する賠償金のことです。
逸失利益は被害者の年齢や収入をもとに計算します。ただし少しややこしい計算になるので、興味のある方は下記のページをご覧ください。
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逸失利益とは?後遺障害によって減った収入の補償を解説
圧迫骨折の慰謝料・保険金事例
アズール法律事務所にご依頼いただいた圧迫骨折の事例を紹介します。
弁護士による示談交渉で、実際にどれくらいの慰謝料・保険金が獲得できたのか、参考になると思います。
事例①歩行中の事故による腰椎圧迫骨折
Aさん(40歳男性)は横断歩道を渡っていたところ、信号を無視して走ってきた加害者の車に衝突され転倒。腰を強く打ち、腰椎に圧迫骨折が生じました。
後遺障害等級:11級7号 | |
---|---|
獲得示談金合計 | 1751万4千円 |
治療費等 | 85万4千円 |
休業損害 | 110万円 |
障害(入通院)慰謝料 | 120万円 |
後遺障害慰謝料 | 420万円 |
逸失利益 | 980万円 |
この事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
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腰椎圧迫骨折で11級7号の後遺障害、弁護士の主張で示談金1700万円を獲得
事例②自転車での事故による腰椎圧迫骨折
Eさん(53歳、女性)は、自転車で横断歩道を渡ろうとしていたところ、右折してきたトラックに突っ込まれて衝突。腰椎に圧迫骨折が生じました。
アズール法律事務所にご依頼いただいた結果、約1386万円の賠償金を獲得できました。
後遺障害等級:11級7号 | |
---|---|
獲得示談金合計 | 1386万7729円 |
治療費等 | 173万446円 |
休業損害 | 152万3264円 |
障害(入通院)慰謝料 | 148万8522円 |
後遺障害慰謝料 | 420万円 |
逸失利益 | 492万5497円 |
この事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
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腰椎圧迫骨折で11級7号、裁判で1300万の慰謝料等を獲得した例
事例③歩行中の事故による胸椎圧迫骨折
Tさん(52歳、男性)は、交差点で横断歩道を歩行中、信号を無視して走ってきたオートバイにはねられ転倒。胸椎に圧迫骨折が生じ、背骨に大きな変形障害が残りました。
アズール法律事務所にご依頼いただいた結果、2735万円の賠償金を獲得できました。
後遺障害等級:8級相当 | |
---|---|
獲得示談金合計 | 2735万円 |
治療費等 | 133円 |
休業損害 | 160万円 |
障害(入通院)慰謝料 | 132万円 |
後遺障害慰謝料 | 830万円 |
逸失利益 | 2735万円 |
この事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
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胸椎の圧迫骨折で背骨が後弯し8級を獲得した事例
まとめ
交通事故による腰椎圧迫骨折や胸椎圧迫骨折は完治が難しく、後遺障害に該当する可能性も大きいです。それだけに、弁護士に保険金請求の手続きを依頼すると、慰謝料・保険金の金額が大きく変わってきます。
また、圧迫骨折を証明するために有効なのは、早めのCTやMRI撮影です。それには医師と弁護士が連携が必要になります。
不幸にも交通事故に遭ってしまったことはやり直せません。でも、これ以上の後悔をしないためにも、圧迫骨折の可能性がある場合は、ぜひ交通事故に詳しい弁護士に相談するようにしてください。