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併合6級(7級4号・記憶障害と12級・臭覚障害の併合)に認定された事故・ケガの状況
群馬県在住のSさん(22歳、男性)は、原付バイクで道路を直進走行中、居眠りでセンターラインをオーバーしてきた自動車に突っ込まれてしました。Sさんはその場で意識を失い、すぐに救急車で病院に搬送されました。
Sさんのケガの診断名は
- 脳挫傷
- 急性脳腫脹
- 外傷性くも膜下出血
- 気脳症
- 頭蓋底骨折
- 後頭蓋窩硬膜外血腫
- 右椎体骨骨折
- 右難聴
であり、かなりの重傷でした。
Sさんは病院へ搬送された後、頭蓋内圧モニター挿入術を受け、救命センターに入院となりました。入院当初は集中治療室で治療を行いましたが、一時は意識障害が遷延化し、重篤な状態になりました。遷延性意識障害とはいわゆる意識がなく、植物状態とされることをいいます。しかし年齢が若かったことも好影響したのか、Sさんは何とか意識を取り戻し、約2ヶ月後に退院され自宅療養に移りました。
事故による重大な記憶障害により仕事を失う
長期間の治療にもかかわらず、Sさんには高次脳機能障害と臭覚障害が残りました。Sさんは後遺症の影響で物忘れがひどく、仕事にも影響が出ていました。また職業柄、においを感じられないことで大きな不利益を受けました。Sさんは当初ご自分で保険会社と交渉を続けていましたが、自分に提示された金額が正当なものかどうか分からず、また後遺症のせいかひどく忘れっぽくなって交渉が難しいことからアズールに依頼されました。
アズール法律事務所にご依頼されてから
アズールでSさんの交渉の状況をもう一度詳しく精査した結果、
- 交通費がまともに請求できておらず支払われていない
- 入院にかかる費用が全く支払われていない
- 後遺障害診断にかかる費用もほとんどが計上されていない
- 休業補償が低すぎる
- 入通院慰謝料がとんでもなく定額(本件では長期間入院されているのに)
- 逸失利益の基礎額が自賠責の基準になってしまっている
- 後遺障害慰謝料が逸失利益とまとめられてしまっていていくらなのかわからない
- そもそも逸失利益と後遺障害慰謝料が低すぎる(自賠責の基準よりも低いと思われる)
など様々な問題点があぶり出されました。
このままで示談するのはあまりに被害者に不利な提示案でした。
あまりに低すぎる基準に固執する保険会社
Sさんの交渉が始まり、保険会社に弁護士基準で計算しなおした賠償額を提示しました。ところが保険会社は何を考えているのか、7級ではなく9級の基準と思われる計算額を提示してきます。臭覚に関しては、「仕事に影響ない」との一点張りで計算に入れようとしません。もちろん本来は併合6級ですから、まともに支払ってしまえばかなりの金額を覚悟しなければならないので保険会社も必死です。
結局やむなく裁判所への提訴となりました。
裁判では、
- Sさんの記憶障害の程度は7級に該当するものであることを医証から証明
- Sさんの請求額は妥当なものであり過大な請求は行われていないこと
- 逸失利益について、現在は無職であるが事故当時の仕事の状況からは当然認められるべきものであること
- 慰謝料について、かなりの重傷を負い仕事も失ってしまったこと
- 臭覚障害について、仕事の性質上かなりの不利益をこうむること
などを主張し、ほとんどの部分で裁判所にも認めていただきました。結果、下記の慰謝料・保険金を獲得することができました。
併合6級の賠償額
項目 | 併合6級の賠償額 |
---|---|
治療費 | 285万円 |
入院雑費 | 21万円 |
交通費 | 29万3000円 |
文書料 | 5万7000円 |
休業補償 | 101万5000円 |
入通院慰謝料 | 219万円 |
逸失利益 | 5394万2000円 |
後遺障害慰謝料 | 1180万円 |
合計 | 7235万7000円 |
正当な慰謝料・保険金を獲得するには?
このように、併合6級ともなると保険金・慰謝料の額も尋常ではない額になってきます。当然支払いたくない保険会社はかなり争ってきます。弁護士が入らないと保険会社はまともな保険金を支払おうとしません。
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弁護士基準とは? 交通事故の慰謝料が増額する可能性を解説
そもそもこの実例では併合6級の慰謝料・保険金が全く無視されて、9級相当の額しか(それでもさらに削られていた)払おうとしなかったことが重大な問題です。さらにいえば、自分に提示されている金額が一体どのような理屈で計算されているのか、また大体の相場がいくらなのか、は普段から交通事故を扱っていないと見つけることは困難だと思います。
自分の等級が妥当か、自分の等級に支払われる賠償額は相場に照らし合わせて妥当なものか、一度は専門家にご相談されてください。