むち打ちになった交通事故の状況
Yさん(事故当時38歳、女性)は、自動車に乗車中に信号待ちをしていたところ、後続の自動車に追突されました。
Yさんはかなりの衝撃で首や腰に強い痛みを感じたといいます。Yさんは救急車で病院に運ばれました。同乗者の方も一緒に救急車で病院へ運ばれました。
医師の診断を受けたところYさんのケガは、
- 頚部捻挫
- 腰椎捻挫
- 頚部痛
でした。
いわゆる「むち打ち」というものです。 医学的には「むち打ち」という診断名はありません。一般的に「むち打ち」とは、医学的には「頚椎捻挫」(けいついねんざ、要するに首の骨をねんざしたこと)や「腰椎捻挫」(ようついねんざ、腰の骨をねんざしたこと)についていわれることが多いように思います。
交通事故では、「むち打ち」の場合、後遺障害等級14級9号を目指すことがほとんどです。骨折や脱臼が画像上現れている場合は12級13号を目指すことができます。
理学的療法の通院と投薬
Yさんは1年以上通院し、理学的療法を受けました。
Yさんは会社で責任ある立場にあり日々多忙な毎日を送っていましたが、治療のためきちんと通院されました。また痛み止めやブロック注射等の治療も受けました。しかし事故の影響で、長時間座っているのがつらく、どうしても仕事を早めに切り上げざるを得ない後遺症が残っていました。
Yさんはインターネットで自分の症状について調べていくうちに当事務所を知り、専門弁護士に相談を、ということでご来所いただきました。
ただYさんには骨折・脱臼がなかったことから、全体としてみれば後遺障害等級認定には不利な状況でした。そこで、神経症状についてきちんとした等級の取得を目指しました。
Yさんは、かなりの長期間の治療ということもあり、いつ治療を打ち切るかが問題となりました。6か月を経過すると、保険会社からむち打ちについて打ち切るといってくることも多いです。しかしYさんの痛みの程度などを考慮して1年以上の通院が認められました。
むち打ちで後遺障害等級(後遺障害)14級9号認定を獲得するには?
むち打ちで後遺障害等級というのは、意外に取りにくいものです。 むち打ちで14級9号を取るには、
- 治療期間
- 治療内容
- 診断書の書き方
- 被害者請求時点でどういう書類を提出するか
- 症状固定後の状況
などのポイントを押さえた申請をしないと認定されません。
Yさんの後遺障害診断書には、神経症状の際によく診断される「頸椎捻挫」「腰椎捻挫」に加えて次の症状が記載されました。
- 頚部痛
- 眼痛
- 睡眠不良
- 頭痛
- 腰痛(起床時に増悪)
- 着衣の圧迫により腰痛が増悪
後遺障害診断書の最後に記載される 「障害内容の増悪・緩解の見通し」 については 「不明」 と診断されました。 実は、この「障害内容の増悪・緩解の見通し」は結構重要です。等級について被害者請求をする場合、この欄の記載内容が悪いとそれを理由に認定が得られない場合がかなり多く見られるからです。
被害者請求について知りたい場合はこちら→ 被害者請求とは?6つの段階で知る
事前にご相談いただいたことで等級申請についての診断書の問題点もクリアにできました。
結果的にYさんには、後遺障害14級9号が認定されました。
14級9号の実際の慰謝料・保険金交渉の経緯
等級に認定されてから相手方保険会社との交渉が始まりました。
当初、逸失利益についてかなりの開きがありました。Yさんは会社でも上級の地位だったため収入も多かったからです。こちらの請求額と相手の回答には3倍近い開きが当初はありました。しかし理論上やYさんの思いを主張し、徐々に差は縮まってきました。最終的には裁判を提起するかどうかというところまで行きましたが、保険会社が折れて示談で終わることになりました。
後遺障害14級9号(頚椎捻挫)の慰謝料・保険金額
項目 | 後遺障害14級9号の慰謝料・保険金額 |
---|---|
治療費 | 108万1675円 |
通院交通費 | 4万890円 |
文書料 | 5250円 |
休業補償 | 64万9523円 |
入通院慰謝料 | 105万1700円 |
逸失利益 | 104万9760円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 |
合計 | 497万8798円 |
14級9号に認定された本件交通事故のポイント
本件では、
- 治療の打ち切り
- 慰謝料
- 逸失利益
- 後遺障害診断書
について問題となりました。
治療の打ち切りについては、ご本人の状況・医療への紹介などを通じて保険会社を説得しました。打ち切りについてはなかなか延長することが難しいのも現実ですが、今回はうまく乗り切ることができました。
慰謝料については、裁判前提で当初より交渉を行っていたため、満足いく額を獲得できました。
逸失利益についてはもともとの収入が多かったためかなり問題となりましたが、こちらも理論的に主張することで解決することができました。
後遺障害診断書については、一部にミスがあり修正が必要でしたが、医師にうまくお願いすることができ14級9号の獲得につながりました。
全体として、ご依頼者には満足いただける内容となりました。