死亡交通事故の慰謝料について不在者財産管理人を申請した事例【神奈川県】

このページでは不在者財産管理人を申請したケースをご紹介しています。不在者財産管理人とは、行方不明の相続人の財産を管理する人のことです。事故は突然起こりますので、こうしたケースも見受けられます。

死亡事故が起きてしまった状況

神奈川県在住のTさん(72歳、男性)は、深夜に自転車で勤務先から自宅へ戻る途中、直進してきたオートバイに衝突されました。 Tさんはすぐに救急車で病院に搬送され治療を受けました。

医師による診断は、

  • 外傷性くも膜下出血
  • 頭部打撲傷
  • 頭部擦過傷
  • 胸部打撲傷
  • 肋骨骨折
  • 意識障害

でした。

Tさんは意識不明のまま2か月近く入院され、治療を受けました。しかし結局意識が戻ることなく交通事故から2か月経ってからお亡くなりになりました。 奥様は急にご主人が亡くなったため、心労で寝込んでしまうほどでした。

死亡事故の交渉をアズールにご依頼されるまで

Tさんには行方不明のご長男がいらっしゃいました。 次男の方がTさんの葬儀を行いましたが、保険金の支払いには長男の方の同意がどうしても必要でした。 また保険金の相場についてもよくわからず、次男の方は将来どう進めていけばよいか迷われていました。そこで弁護士を、ということでアズールにご相談になりました。

相続人への連絡がつかないため不在者財産管理人を選任

ご依頼いただいてから、まずはご長男の行方を追いました。知り合いなどにも電話をしましたが「海外にいるらしいが日本には戻ってこない」とのわずかな情報だけでした。やむを得ず、不在者財産管理人の選任を申し立てることにしました。不在者財産管理制度は、不在者や関係者の財産管理に関する保護を図るものです。不在者とは、住所または居所から去り、かつ容易に復帰できない状態のことをいいます。

→ 外部サイト:不在者財産管理制度:裁判所ホームページ

交通事故で亡くなった方の相続人が不明な場合、保険会社はそのままでは保険金を支払おうとしません。不在者財産管理制度は交通事故で亡くなった方の相続人が不明な場合、残された遺族の方が取りうる手段の一つです。今回の事件では、不在者財産管理人の選任を裁判所に申請し、無事認められました。

ただ、これは示談の入り口にすぎません。実際の交渉はここからです。

保険会社の提示の検討

過失割合について

Tさんのご遺族に示された保険会社からの提示には、40%もの過失割合が記載されていました。過失割合40%というと既払い金を除くとほとんど支払われないことになってしまいます。保険会社の主張した過失割合には、あらゆる主張が盛り込まれていました。中には法律上到底認められそうにない主張も含まれていました。交渉ではなかなか保険会社も引かず、結局裁判をすることになりました。

裁判ではこちらの主張がかなり認められ、過失割合は20%まで減らされることになりました。

慰謝料・逸失利益について

死亡事故の慰謝料については、通常保険会社はまともに支払おうとしません。大手の保険会社だから「まともな」金額を支払ってくれるだろうと勘違いしてはいけません。死亡慰謝料は自賠責保険の基準で提示されることがほとんどです。Tさんへの提示についても、まさに自賠責の慰謝料のみが提示されていました。

また、将来の収入分の補償、いわゆる逸失利益についても年金部分について提示がなされていませんでした。保険会社の担当者に詰め寄ったところ、「あれ?入ってませんでしたっけ?」などととぼける始末です。これらを交渉することにして、相手方とやり取りを始めました。

慰謝料についてはある程度満足のいく提示がありましたが、逸失利益については不満の残る提示でした。過失割合と含めて裁判になりました。裁判では年金部分も含めてほぼこちらの主張が認められました。

結果として2000万円近い増額を勝ち取ったことで、Tさんのご遺族もご満足いただけました。

Tさんに認められた死亡事故の賠償金(過失相殺考慮前)

項目 Tさんの死亡保険金
治療費 552万4370円
入院雑費 3万8500円
入院看護料 14万7700円
文書料 5250円
葬儀費 136万6250円
逸失利益 1093万円
本人分死亡慰謝料 1800万円
遺族分死亡慰謝料 600万円
合計 4201万2070円

今回の事件のポイント

今回の事件のポイントは、不在者財産管理人の選任を申し立てたことです。相続人の居場所も住民票などを丁寧にたどると判明することが多いため、今回の事例は珍しいといえます。保険金については、死亡事故一般にいえる特徴がありました。それは、

  1. 慰謝料が非常に低い
  2. 逸失利益について項目すら抜けている場合がある

など、かなりずさんな提示がなされるということです。弁護士が保険会社の担当者に問いただすと、「そういえば忘れていました」などと平気で言うこともあるから驚きです。

うかつに示談書にサインせず、一度は専門家に相談してみることをお勧めします。