逸失利益の増額の可能性は?相場と正しい計算方法を解説

交通事故の被害者には治療費や慰謝料など、さまざまな賠償金が支払われます。
「逸失利益」もその中のひとつで、今後できるはずの仕事ができなくなり減ってしまう収入を埋め合わせる賠償金です。

交通事故の損害賠償では「慰謝料」よりも「逸失利益」の方が高額になるケースも多く見られます。それだけに賠償金を支払う側の保険会社としては、なんとかその金額を下げようとしてきます。それに対抗して「逸失利益」を増額させるには、相当の知識と交渉力が必要です。

この記事では「逸失利益」の金額はどうやって決まるのか、保険会社の提示する逸失利益よりも増額する可能性はあるのか…等をできるだけわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

この記事を読んでいただくと…

・「逸失利益」とは何なのかがわかります。
・「逸失利益」の計算方法がわかります。
・「逸失利益」を増額させる方法がわかります。

交通事故の逸失利益に疑問を感じたら
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目次

逸失利益とは

交通事故によって後遺障害が残ると、本来できるはずの仕事ができなくなり、今後の収入が減ってしまうことが予想されます。この減ってしまう将来の収入の埋め合わせとして支払われるのが「逸失利益」です。

「逸失利益」として請求できる金額は、ざっくり言うと「減ってしまう収入額」に「働けるはずだった期間」を掛けた金額です。ただし、実際はもう少し複雑で下記の式で計算します。

逸失利益の計算式

基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(労働能力喪失期間による)

詳しい計算方法については、後ほど説明します。

慰謝料と逸失利益の違い

交通事故の被害者の方が受け取れる賠償金というと「慰謝料」がまず頭に浮かぶと思います。賠償金の中で「慰謝料」の割合は確かに大きいのですが、ケースによっては「逸失利益」はそれよりも大きな金額になります。

それだけに、賠償金を支払う側の保険会社としては、なるべく金額を抑えたいと考えます。保険会社から正当な賠償金・保険金を受け取るためには「慰謝料」だけではなく「逸失利益」についてもしっかり主張することが重要です。

「慰謝料」と「逸失利益」は、どちらも認定された後遺障害等級によって金額が決まります。

「慰謝料」は「精神的な苦痛」に対して支払われるので、後遺障害等級が同じならば年齢や職業とは関係なく一定額が支払われるのが基本です。

一方で「逸失利益」は「これからの生涯において見込まれる収入の減少」を保証するものです。したがって後遺障害等級が同じでも、被害者の方の現在の収入や年齢によって支払われる金額は大きく変わります。

休業損害と逸失利益の違い

交通事故のせいで減ってしまう収入を埋め合わせる賠償金としては「逸失利益」のほかに「休業損害」があります。

どちらも仕事ができなくて減少した収入について賠償するものですが、ケガの治療中に支払われるのが「休業損害」、ケガの治療が終わり症状固定となった後に支払われるのが「逸失利益」ということになります。

「休業損害」は事故のケガが原因で仕事を休んだ日数に応じて、月毎に保険会社から支払われます。ただし仕事を休んだとしても、収入が減らない場合は請求できません。

「逸失利益」は一定期間の治療を行なってもケガが完治せず、後遺症が残ってしまった場合のみに支払われます。実際に支払いを受けるためには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。「逸失利益」は後遺障害等級が認定されて示談が成立した後に一括で支払われます。

逸失利益の計算方法

「逸失利益」として請求できる金額は、ざっくり言うと「減ってしまった収入額」×「働けるはずだった期間」です。実際はもう少し複雑で下記の式によって計算されます。

逸失利益の計算式

①基礎収入 × ②労働能力喪失率 × ④ライプニッツ係数(③労働能力喪失期間による)

ちょっと言葉は難しいのですが、だいたいの意味は以下のとおりです。

  • ①基礎収入:逸失利益の計算のベースとなる収入。基本的には事故の前年の年収額。
  • ②労働能力喪失率:後遺障害等級ごとに決められている働く能力の喪失の割合。最も重い後遺障害1級では100%、最も軽い14級では5%。
  • ③労働能力喪失期間:働く能力が失われる期間。通常は症状固定日から67歳までの期間。
  • ④ライプニッツ係数:将来の収入を一括で受け取ることによって生じる中間利息を差し引くための係数。

逸失利益の計算例

たとえば以下の条件で逸失利益額を計算してみましょう。

  • ①前年の年収 400万円
  • 後遺障害等級 11級(②労働能力喪失率 20%)
  • 年齢 40歳(③労働能力喪失期間 27年)
  • ※27年間に対する④ライプニッツ係数は 18.3270

①400万円 × ②20% × ④18.3270(③27年)=約1466万円

このケースでは逸失利益として約1466万円が受け取れるということになります。

基礎収入額とは

「基礎収入額」は「逸失利益」を計算する際のベースとなる金額となります。基本的には交通事故が発生した前の年の年収額となります。
ただし、被害者の方の職業や立場により基礎収入額の考え方は違ってきます。それぞれ詳しく見てみましょう。

会社員(給与所得者)の基礎収入

会社員など給与を得ている方の「基礎収入」は、原則として事故前の現実の収入額、ボーナス等を含んだ年収で計算をします。勤務先が発行する源泉徴収票や給与明細を使って年収を証明することができます。

ただし、まだ若い方である場合は不都合が出てきます。
どういうことかというと、若いうちはまだ給料も低いことが多いからです。低い給与額のまま67歳までの逸失利益を計算すると、その合計も低いものになってしまいます。このような不合理を避けるため、30歳以下の方は「賃金センサス」の全年齢平均賃金を「基礎収入」として計算することがあります。

「賃金センサス」とは、厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』のことで、男女別、学歴別等の賃金の情報をまとめたものです。『賃金構造基本統計調査』の結果は厚生労働省のWEBサイトから閲覧が可能です。
なお、2019年の全年齢平均賃金は年額5,006,900円となっています。

給与所得者の基礎収入額

原則:前年の年収額
例外:30歳以下の場合は賃金センサスの全年齢平均賃金

会社役員の基礎収入

会社役員は会社から役員報酬を受け取ります。この役員報酬は「配当」だとされているので事故とは無関係、つまり「基礎収入」にはならないと言われています。

しかし会社役員といえども現実的には実際に働いている方がほとんどだと思います。会社役員でも、実際の労働状況を立証することで役員報酬を「基礎収入」とすることができます。
ただその割合などは状況にもよりますので、詳しくは弁護士ご相談いただいた方がよいかと思います。

会社役員の基礎収入額

原則:配当部分は基礎収入とならない
例外:労働部分は基礎収入となる

自営業者の基礎収入

個人で事業をされている自営業者や個人事業主の場合、「基礎収入」は前年度の確定申告額に基づく収入額から固定経費以外の経費を差し引いた金額です。

では、申告していなかったものがある場合はどうでしょうか? 税務署にとってはけしからん話かもしれませんが、実際にこういったことは結構あります。

交通事故の「逸失利益」の計算では、申告と実際の収入が違う場合、実際の収入額が申告所得額よりも高いことを立証することが必要です。立証をきちんと行えば、実際の収入額が「基礎収入」となります。しかしこの立証はなかなか難しいこともあります。詳しくはご相談下さい。

個人事業主の基礎収入額

原則:申告している額
例外:実際の収入

主婦(専業・兼業)の基礎収入

専業主婦の方でも家事労働に対して逸失利益が支払われます。その計算方法は「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」の全女性労働者の平均賃金を基礎収入とします。
(令和元年の全女性労働者の平均賃金は年額388万円となっています)

主婦の方でパートなどの収入がある場合は「パートなどの収入額」と「全女性労働者の平均賃金」の高い方を基礎収入とします。

ところで、男性が家事労働者(主夫)であるケースはどうででょう。
これまで、家事労働者の基礎収入については、性別が男女いずれであるかを問わず、全女性労働者の平均賃金と同価として評価される傾向にありました。ただし今日ではこれを見直す動きもあります。

家事従事者の基礎収入額

原則:賃金センサスによる

学生、子どもの基礎収入

学生の方は基本的には事故の時点では収入がありません。しかし、卒業後は就職する可能性が高いと思われることから、卒業後に得られるであろう収入を「基礎収入」とします。原則として「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」の全年齢平均賃金が基準になります。
(2019年の全年齢平均賃金は年額5,006,900円となっています)

例外として、事故の時点で被害者の方が大学生だった場合や大学に合格して入学予定だった場合、さらには家族全員が大学を出ているなどの事情から、被害者が事故にあわなければ大学進学の可能性が高かったと判断できる場合には「賃金センサス」の大卒労働者の平均賃金を「基礎収入」として計算するケースもあります。

学生、子どもの基礎収入

原則:賃金センサスの全年齢平均賃金
例外:大卒の基準

高齢者の基礎収入

高齢者の方でも事故の時点で就労している場合は実収入を「基礎収入」とするのが基本です。

また、主婦として家族のため家事労働をしている場合も、事故の後遺症でそれができなくなれば逸失利益が認められます。
この場合は「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」の平均賃金が基礎収入として使われます。ただし高齢者の場合は、若者よりも労働能力がやや劣ると考えられることから20〜30%ほど減額されることが多いようです。

年金生活者の場合は、ケガや後遺障害が生じても収入に変化がないので逸失利益は発生しません。
ただし、亡くなってしまった場合は年金生活者でも死亡逸失利益が認められる場合があります(年金の中でも、老齢年金や障害年金、退職年金などは逸失利益性が認められています)。

高齢者の基礎収入

原則:実収入額(年金は含まない)
例外:家事労働の場合は賃金センサスによる(減額されることが多い)

無職(無収入)の方の基礎収入

無職の方は交通事故にあっても収入が減るわけではないので、原則として「逸失利益」はありません。
しかし、事故時には無職だったけれど、次の仕事を探して就職活動中ということもあるでしょう。無職であっても、これから仕事をする可能性あったのであれば「逸失利益」が認められることがあります。

  • 仕事をする意欲があった(探していた)
  • 仕事をする可能性が高かった(就職先が決まっていた)
  • 仕事をする能力があった(技術があった)

具体的には、交通事故の前に内定先があった場合、就職活動中であった場合などです。交通事故がなければ就職していた可能性が高かったと考えられる場合には「逸失利益」が認められます。

その場合の基礎収入としては「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」の全年齢平均賃金が使われます。

無職の場合の基礎収入

原則:なし
例外:仕事をする可能性が高かった場合は賃金センサスによる

労働能力喪失率とは

「労働能力喪失率」とは、後遺障害の影響でどれほど働けなくなったかをパーセンテージで表したものです。 後遺障害等級ごとにおおよその目安が決められています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級(要介護) 100%
第2級(要介護) 100%
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%
労働能力喪失率表

ただし、この「労働能力喪失率」がそのまま適用されるわけではありません。実際には被害者の方の後遺症の程度や仕事の内容、年齢などいろいろな事情を考慮して決められていくことになります。 

逆にいうと、保険会社から「仕事をするのに影響がない」と判断された場合は、「労働能力喪失率」が認められず「逸失利益」が減額されたり、支払われないということもあります。

労働能力喪失期間とは

「労働能力喪失期間」とは、治療が終了して後遺症が確定した「症状固定」の時点から、一般に働けるとされている67歳までの期間のことです。

一般的には後遺障害診断書に記入された日付が症状固定日となります。したがって、後遺障害診断書の日付当時の年齢を67歳から引けば、比較的簡単に労働能力喪失期間は計算できます。 ただし、下記の場合は例外となりますので、注意が必要です。

  • 未成年や未就労者
  • 高齢者
  • むち打ちの場合

未成年者の労働能力喪失期間

ここでいう未成年とは、まだ就労していない方も含みます。未成年・未就労の場合は、まだ働いていないため、労働能力喪失期間は仕事を始めるであろう歳から計算します。大学卒業予定の場合は22歳から、それ以外は18歳から67歳までの期間が労働能力喪失期間となります。

高齢者の労働能力喪失期間

高齢者の場合は、下記のどちらか長い方を労働能力喪失期間とします。

  • 症状固定時(お亡くなりになった場合は死亡時)から67歳までの年数
  • 簡易生命表により求めた平均余命年数の2分の1

簡易生命表は厚生労働省のサイトで確認することができます。

むち打ちの場合の労働能力喪失期間

むち打ちの方など、神経障害を負った方も労働能力喪失期間が制限される場合があります。後遺障害等級としては「12級13号」または「14級9号」に認定された方です。
これらの後遺障害の場合は、5~10年程度に制限されることがあります。

ただ、症状によってはかなり長い年数を認めた裁判例もありますので、詳しくはご相談いただければと思います。

ライプニッツ係数とは

「ライプニッツ係数」とは中間利息を控除するために使われる数字です。

そもそも「逸失利益」とは「将来もらえるはずだった収入が減ってしまうので、それを賠償しましょうという」ことです。

ただ「逸失利益」は、交通事故の示談をするときに一括で保険会社から支払われることになります。 そうすると「将来の給料を今まとめてもらえる」ということになります。

これのどこがおかしいの? そう思われるかもしれませんが、たとえばこの先30年分の給料をまとめて今もらえるとするとどうなるでしょう? 金融機関に預けて運用すれば利息や運用益がつきますよね? 

そこで、将来の収入を今もらうわけだから「その利息分を減らしましょう」ということになっています。この差し引かれる将来利息の計算に使われるのが「ライプニッツ係数」です。

ライプニッツ係数は、民法の利息で計算されます。現在の民法の利息は3%です(2020年4月1日改正)。したがって毎年3%の利息分が保険金の総額から引かれるということになります。

ライプニッツ係数表

実際のライプニッツ係数は下の表のとおりです。何年分の収入を受け取るかによって、ライプニッツ係数が変わります。

たとえば、10年分の逸失利益を受け取る場合のライプニッツ係数は「8.5302」ですので、約8年半分になってしまうということになります。

年数 ライプニッツ係数 年数 ライプニッツ係数
1 0.9709 35 21.4872
2 1.9135 36 21.8323
3 2.8286 37 22.1672
4 3.7171 38 22.4925
5 4.5797 39 22.8082
6 5.4172 40 23.1148
7 6.2303 41 23.4124
8 7.0197 42 23.7014
9 7.7861 43 23.9819
10 8.5302 44 24.2543
11 9.2526 45 24.5187
12 9.9540 46 24.7754
13 10.6350 47 25.0247
14 11.2961 48 25.2667
15 11.9379 49 25.5017
16 12.5611 50 25.7298
17 13.1661 51 25.9512
18 13.7535 52 26.1662
19 14.3238 53 26.3750
20 14.8775 54 26.5777
21 15.4150 55 26.7744
22 15.9369 56 26.9655
23 16.4436 57 27.1509
24 16.9355 58 27.3310
25 17.4131 59 27.5058
26 17.8768 60 27.6756
27 18.3270 61 27.8404
28 18.7641 62 28.0003
29 19.1885 63 28.1557
30 19.6004 64 28.3065
31 20.0004 65 28.4529
32 20.3888 66 28.5950
33 20.7658 67 28.7330
34 21.1318 68 28.8670
ライプニッツ係数表(2020年4月1日改正)

死亡事故の逸失利益

不幸にも被害者の方が亡くなった場合は「死亡逸失利益」が支払われます。
「死亡逸失利益」とは「被害者の方が事故にあわなかったとしたら、これからの人生で得られるはずであった収入」ということになります。

死亡逸失利益の計算方法

「死亡逸失利益」は後遺障害の逸失利益とは少し違って、下記の式で計算されます。

死亡逸失利益の計算式

基礎収入額 ×(1-生活費控除率)× ライプニッツ係数(就労可能年数による)

基礎収入額」や「ライプニッツ係数」は、後遺障害の逸失利益の計算と同様です。
ここでは「生活費控除率」と「就労可能年数」について順に説明します。

生活費控除率とは?

「死亡逸失利益」では亡くなった方の将来の収入をまとめて受け取ることになります。ただし、そのままでは亡くなった方の生活費も含まれた額になってしまいます。実際には亡くなった方の生活費はかからないはずなので、その分の金額は差し引いて支払われます。その計算に使われるのが生活費控除率です。

例えば年収500万円の方が交通事故で亡くなったとします。そうすると、亡くなった方が使うはずだった生活費の200万円は不要になるので、残りの300万円を補償する…という考え方です。

この場合年収の40%を生活費として控除しているのですが、このパーセンテージは亡くなった方の状況によって目安が決められています。

亡くなった方の状況
生活費控除率
一家の支柱(家族を収入面から主に支えている方) 被扶養者1人 40%
被扶養者2人以上 30%
女子(主婦・独身・幼児等を含む)   30%
男子(独身・幼児等を含む)   40%~50%
生活費控除率

生活費がいくら必要かは個人差が大きいのですが、被害者が死亡している以上、想定は困難なため、亡くなった方が一家の主な収入者かどうかで生活費控除率が決められます。

では、同じ一家の支柱でも「被扶養者2人以上」よりも「被扶養者1人」の生活費控除率が低いのはなぜなのでしょうか?

たとえば、被扶養者1人の場合とは夫婦2人の場合で、被扶養者2人以上とは夫婦に子供がいる場合になります。当然、子供がいる世帯の方が生活費が収入に占める割合は高くなるでしょう。

しかし、生活費控除率では子供がいる世帯の方が低く設定されています。これは、扶養家族が多い方が、被害者自身の生活費の支出は抑えるだろうという点と、遺族の生活保障に配慮した控除率になっていると考えられます。

また、一概に男性の方が生活費が多いわけではないのに、男子と女子で生活費控除率が違うのはなぜでしょう。

これは、賃金センサスの男女別の平均賃金からもわかるように、日本ではまだ男女間の賃金格差があるとされており、女性被害者の方が基礎収入額が低く設定される傾向にあります。そこで女性の生活費控除率を低く設定することで、性別による格差を是正しようと考慮していると考えられます。

就労可能年数とは?

死亡逸失利益における「就労可能年数」は、亡くなった方がもし生きていたらあと何年働くことができたかを表します。後遺障害による逸失利益を計算する場合の「労働能力喪失期間」にあたります。

「就労可能年数」の計算はそれほど難しいものではありません。一般的に働けるのは67歳までとされているので、67歳から死亡事故時の年齢を引いたのが「就労可能年数」となります。

ただし、未成年の方は別の方法があります。また高齢者(67歳に近い方、超えた方)も注意が必要です。

未成年者の就労可能年数

ここでいう未成年とは、未就労の方も含みます。未成年の方は、まだ働いていないため、就労可能年数は仕事を始める時から計算します。大学卒業かどうかで18歳または22歳から計算します。

大学卒業の場合は「67歳 − 22歳」で45年、それ以外は「67歳 − 18歳」で49年が就労可能年数となります。

高齢者の就労可能年数

高齢者の場合は「死亡時から67歳までの年数」と「平均余命年数の2分の1」の長い方が就労可能年数となります。

「平均余命」とは「ある年齢の人が、あと何年生きることができるのか」を表している期待値です。

男女別に算出され、厚生労働省から発表される簡易生命表で確認することができます。

死亡逸失利益の計算例

では実際に死亡逸失利益の計算をしてみましょう。

死亡逸失利益の計算式

①基礎収入額 ×(1 − ②生活費控除率)× ④ライプニッツ係数(③就労可能年数による)

  • ①前年の年収 400万円
  • 一家の柱で扶養者2人(②生活費控除率 30%)
  • 年齢 40歳(③就労可能年数 27年)
  • ※27年に対する④ライプニッツ係数は 18.3270

この条件を「死亡逸失利益の計算式」にあてはめてみます。

①400万円 × (1 − ②30% = 70%)× ④18.3270(③27年)= 5131万円

上の計算の結果「5131万円」がこのケースでの「死亡逸失利益」となります。

逸失利益が増額する可能性

交通事故による逸失利益は、ここまで読んでいただいたとおり、おおよその計算方法は決まっています。しかし、それはあくまでこれまでの事例をもとにした目安なので、その通りの逸失利益額を保険会社が提示してくれるわけではありません。

むしろ保険会社は、個別の事情を都合よく解釈して、できるだけ逸失利益額を低く抑えようとしてくる場合が多いのです。こうした保険会社のやり方を見抜いて、しっかりと交渉すれば逸失利益が増額する可能性があります。

ただやみくもに交渉しても、保険会社が応じることはありません。

そもそも交通事故の被害者の方は、「逸失利益」という言葉は聞いたこともなかったのではないでしょうか。
一方で保険会社は示談交渉のプロです。しっかりとした知識を前提としないと、結局言いくるめられてしまいます。

しかし本来は保護されるべきの被害者の方が不利になるというのは、なんだかおかしいですよね。そこで被害者側の弁護士が必要になります。

弁護士を入れるというと、弁護士費用を気にする方もいらっしゃると思います。しかし弁護士が入ることで「逸失利益」など被害者の方が受け取る賠償金は大幅に増額します。弁護士費用を差し引いたとしても、被害者の方が受け取る金額的なメリットは大きくなるのです。

弁護士による賠償金の増額

しかも、アズール法律事務所のように、保険会社から支払われた保険金の中から弁護士報酬が支払われる「成功報酬制」であれば、弁護士費用を気にせずご相談いただけます。被害者の方が、自分の懐から弁護士費用を支払う必要がないからです。
相談料についても無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。

逸失利益を増額する4つのポイント

弁護士が「逸失利益」を増額させるためにチェックするのは、以下の4つのポイントです。

①正しい後遺症等級の認定

逸失利益を獲得するためには、まず「後遺障害等級」が認定される必要があります。この「後遺障害等級」の認定が正しく行われているかが第一のチェックポイントです。

「後遺障害等級」は「1級1号」から「14級9号」まで、該当する後遺障害の内容が細かく決められています。また、それぞれの等級に認定されるために必要な診断書の内容や資料も異なります。詳しくは別ページにまとめています。

「後遺障害等級認定」の手続きは、相手側の保険会社に任せることもできます。ただやはり、弁護士に依頼して「被害者請求」の手続きをとった方が正しい結果となる可能性が高くなります。
念のため交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。

②正しい基礎収入額の適用

被害者の方が会社員などの給与所得者の場合は「基礎収入」となる前年の年収額を源泉徴収票などの書類で証明できます。こうした場合は基礎収入額が問題となることはほとんどありません。

しかしそれ以外の場合は何を「基礎収入」とするかの解釈に幅があるため、基礎収入額が正しく設定されているか確認したほうが良いでしょう。

主婦などの家事従事者の方

特に主婦などの家事従事者の方については目に見える収入がないため「基礎収入」を認めてもらえてない事例が多いようです。本来は「賃金センサス」という統計資料の全年齢平均賃金額を「基礎収入」とすることになっています。

なお、パートやアルバイトの収入がある場合も、家族のために家事を行っていた事実があれば家事従事者としての「基礎収入」が認められる場合があります。

自営業や個人事業主の方

確定申告を行っている自営業や個人事業主の方の場合、実収入ではなく前年の確定申告の所得額が「基礎収入」として設定されるのが一般的です。しかし、毎年の収入の変動が大きい場合や突発的な経費を計上していた場合など、考慮してほしい場合も多いと思います。

このような場合には弁護士を通して保険会社と交渉するのが有効です。

③正しい労働能力喪失率の適用

逸失利益額の計算に使われる「労働能力喪失率」は後遺障害等級ごとにそれぞれ目安となるパーセンテージが決められています。しかしあくまで「目安」ですので、保険会社の判断によりそれより低く設定されている場合があります。

特に「労働能力喪失率」が問題となりやすいのは以下のケースです。

腰椎や胸椎の圧迫骨折

腰椎や胸椎の「圧迫骨折」というのは背骨の椎体(ついたい)が上下方向に押しつぶされて変形してしまうことで、多くのケースで「後遺障害11級7号」に認定されます。

しかし保険会社は圧迫骨折に対しては必ずと言って良いほど逸失利益を大きく減額してきます。「背骨の一部に変形が残ったところで収入に大きな影響はない」というのがよく聞かれる保険会社の主張です。

鎖骨骨折による骨の変形

交通事故で鎖骨を骨折した場合、骨がもと通りに治ることは少なく、目に見えるような変形が残ってしまうことが少なくありません。こうした場合は「鎖骨に著しい変形を残すもの」として「後遺障害12級5号」に認定されます。

しかし保険会社は「鎖骨が変形しても労働能力には影響がない」ということで、逸失利益を一切認めないというケースが多いようです。

顔の傷あと

交通事故で顔に傷あとが残ってしまった場合は、その傷あとの大きさによって「後遺障害7級12号」「9級16号」「12級14号」に認定されます。

顔に傷あとが残ってしまうと精神的なショックも大きいのですが、保険会社としては「労働能力には影響がない」として、やはり逸失利益を認めようとしません。

こういった保険会社の主張に対抗するためには、被害者の方のくわしい症状や仕事の内容などの資料を揃えて、後遺障害が今後の収入にもたらす影響について、論理的な交渉を行う必要があります。やはり、こうした交渉についての経験が豊富な弁護士に相談するのが最も良い方法だと思います。

④正しい労働能力喪失期間の適用

逸失利益額の計算に使われる「労働能力喪失期間」については67歳までの期間とするのが原則です。保険外会社もそれ以上の期間を認めようとはしません。

しかしそれだと被害者の方が高齢の場合には「労働能力喪失期間」が極端に短くなってしまいます。60歳代後半でも第一線でお仕事をされている方も今は多いことを考えると、実情にそぐわないケースも出てきます。

また、後遺障害の内容によっては保険会社の判断で「労働能力喪失期間」が、67歳までよりも短く設定されるケースもあります。しっかりと確認しておくべきです。

こうした保険会社の判断を覆すのは容易ではありません。設定された「労働能力喪失期間」が不合理であることを論理的に証明し、粘り強く交渉する必要があります。
もし「労働能力喪失期間」に疑問をお持ちになったのなら、詳しい弁護士に相談してみてください。

逸失利益の増額事例

アズール法律事務所では、これまで数多くの交通事故の被害者の方から依頼をいただき、保険会社との示談交渉を行なってきました。
ここでは特に「逸失利益」が問題になった事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

①腰椎圧迫骨折で逸失利益を増額した例

Aさん(40歳男性)は横断歩道を渡っていたところ、信号を無視して走ってきた加害者の車に衝突され転倒しました。その際に腰を強く打ち、第一腰椎圧迫骨折と診断されました。

Aさんは治療中から弁護士のサポートを受け、後遺障害等級「11級7号」の認定を受けることができました。

しばらくして保険会社から賠償金の提示がありました。しかし「逸失利益」について保険会社は当初支払おうとしませんでした。背骨の一部に変形が残っていても、仕事にはさほど影響がないだろうというのが、その理由です。

そこで弁護士はAさんの就業状況をふまえ、過去の症例をもとに後遺症が将来の収入にどれほど影響するのかをきちんと整理し強く訴えました。そして最終的には1千万円近くの逸失利益が認められました。

②腰椎圧迫骨折で裁判となり逸失利益を増額した例

京都府在住のEさん(53歳、女性)は、自転車で横断歩道を渡ろうとしていたところ、右折してきたトラックに突っ込まれてしまいました。

当初の診断名は腰部打撲傷・頚椎捻挫でした。しかしあまりに痛みがひどいため、後日改めてコンピューター断層撮影(いわゆるCT)等が撮られ、腰椎圧迫骨折が判明し後遺障害等級「11級7号」が認定されました。

しかし保険会社は「背骨に変形が残ったところで収入には影響ない」と主張し、正当な逸失利益を支払おうとせず、最終的には裁判で争うことになりました。

裁判では、Eさんの会社での地位・状況などを詳細に報告書にまとめて提出。また医学上の意見書も追加し、理論的に正当な主張であることを裁判官に訴えました。その結果、保険会社も主張を弱め、裁判官から正当な額の和解案が示されました。裁判提訴により、Eさんに支払われる保険金は約1000万円近く増額されることになりました。

③鎖骨骨折(変形)で逸失利益を増額した例

山梨県在住のDさん(55歳、男性)は、オートバイで信号待ちをしていたところ、脇見をしていた乗用車に追突されました。Dさんは衝撃でバイクごと吹き飛ばされ、右肩を路面に強打、右鎖骨骨折のケガを負いました。その後半年以上の通院治療を行ったものの、鎖骨に変形が残り、後遺障害等級「12級5号」に認定されました。

ところが、保険会社は逸失利益を全く払おうとしませんでした。「変形が残ったからといって、仕事の能率が悪くなったりすることはありませんよね?」というのが保険会社の言い分でした。

しかし、Dさんには変形部分に強い痛みがあり、治療の時点からこの痛みをしっかりと診断書に記載してもらうよう弁護士からアドバイスを受けていました。弁護士はこのことを理由に保険会社と粘り強く交渉を重ね、最終的に500万円近い逸失利益を認めさせました。

④顔の傷あとで逸失利益が認められた例

東京都在住のNさん(24歳、男性)は、自転車で走っていたところ左折してきたトラックに巻き込まれました。Nさんは顔面を地面にこすってしまい、治療後も大きな傷あとが残ってしまいました。結果的にNさんは 「外貌に著しい醜状を残すもの」 として、顔の傷の一番重い等級である後遺障害等級「7級12号」に認定されました。

通常、外貌醜状では逸失利益は全く支払われません。しかしNさんは職業柄接客が必須だったため、Nさんの傷は収入にも直結しました。弁護士は理論的にも実際上も逸失利益がないというのは不当であることを主張しましたが保険会社はこれに応じませんでした。やむを得ず裁判で争うことになりましたが、最終的に約2700万円の逸失利益を獲得することができました。

⑤高齢者の労働能力喪失期間の延長が認められた例

東京都在住のYさん(62歳、男性)は、乗用車で信号待ちのところを後ろから来た自動車に追突され頭蓋骨骨折などの重傷を負いました。長期間の治療を行いましたが、高次脳機能障害の後遺症が残り、後遺障害等級「9級10号」に認定されました。

問題は、Yさんは事故当時62歳だったため、保険会社が「労働能力喪失期間」はたったの「5年」であると主張してきたことです。
「労働能力喪失期間」は就労可能年齢である67歳までとするのが確かに一般的です。しかし高齢者の場合、この計算方法では不公平な結果となります。

アズール法律事務所では、等級も高いこと、実際に高次脳機能障害で日常生活にも大きな支障を抱えていること、本来保険金が高額になる事例のため裁判も辞さないという態度で保険会社と交渉に臨みました。

ポイントをついた主張と粘り強い交渉により保険会社も主張を弱め、合理的な期間に応じた逸失利益が支払われることになりました。最終的に、Yさんに支払われる保険金は約1700万円となり約940万円(2.24倍)も増額されることになりました。

まとめ

交通事故の被害者が受け取る賠償金の中で「逸失利益」は大きな割合を占めます。それだけに正当な金額かどうかを確認することは重要です。ただし、逸失利益額の計算はややこしく、一般の方にはなかなか判断が難しいもの事実です。

少しでも疑問を感じるなら、交通事故を専門に扱う弁護士に相談してみてください。保険会社との交渉に弁護士が入ることで、正当な逸失利益や慰謝料を受け取ることができます。最終的に受け取る金額が大幅に増額するので、弁護士費用を差し引いたとしても、メリットのほうが大きくなります。

不幸にも、交通事故の被害者となってしまったことはやり直せません。でも、これ以上の後悔をしないためにも、保険会社と示談する前に、弁護士に相談するようにしてください。