将来介護費とは?交通事故による後遺症の将来介護費用を解説

交通事故被害で重度の後遺障害(脊髄損傷、遷延性意識障害、高次脳機能障害など)となった場合、近親者や職業介護人による介護が必要になります。その際の介護負担を、加害者側に請求する事が出来ます。どんなケースで将来介護費が請求できるのか、金額はどのくらいなのか、詳しくご解説します。

将来介護費とはどんなお金?

交通事故で重い後遺障害を負うと、日常生活を送るのにも介護や付き添いが必要になることがあります。その介護や付き添いにかかる費用が、将来介護費です。

たとえば遷延性意識障害(いわゆる植物状態)ならば、人工呼吸器の管理や痰の吸引、体位の入れ替えといった介護が必要になります。脊髄損傷による下半身不随なら、トイレや風呂の補助、車いすの補助などが必要です。

将来介護費でいう「介護」の範囲は、日常生活の身体的なサポートだけではありません。高次脳機能障害などで日常の見守りや声かけが必要になった場合も含まれます。

訪問ヘルパーなどの介護のプロに頼む場合は、日当を支払わなければなりません。家族が介護するにしても、その負担は決して少なくありません。その負担を金銭に換算したものが将来介護費です。

どんな後遺障害ならば将来介護費がもらえる?

将来介護費を請求するためには、少なくとも後遺障害3級以上の認定が必要だと考えておきましょう。もちろん、将来にわたって介護が必要だという、医師の診断や指示があることも重要です。

実際には後遺障害4級以下でも、日常的な介護や見守りが欠かせないケースもあるでしょう。しかし後遺障害等級が低いと、将来介護費を請求してもなかなか認められないことが多くなっています。

将来介護費の相場は?

訪問看護や介護サービスを利用する場合は、実費の全額を計算して支払われます。ただし、本当にサービスが必要なのか、費用は実情に即したものなのかなど、詳細を記した書類や細かい資料を揃えて主張しないと、なかなか認められません。

家族などの近親者が介護する場合は、1日当たり6,500円~8,500円が相場となっています。どんな後遺障害があって、日常的にどんな介護が必要なのか、1日のうち介護にどのくらいの時間がかかるのかといった、細かい条件によって金額が変わってきます。より高い将来介護費を認めてもらうためには、やはり詳細な書類や資料を揃えなければなりません。

また、家族も年をとりますから、被害者が亡くなるまで介護ができるとは限りません。そのため、当初の10年間は家族が介護を行い、その後は介護サービスなどを利用するという想定で請求する場合もあります。

将来介護費がもらえる期間は?

将来介護費が受け取れる期間は、症状固定日から交通事故の被害者が亡くなるまでです。症状固定日とは、医師が「これ以上治療しても、症状は改善しない」という診断書を書いた日をいいます。つまり、交通事故被害者が生きている期間はずっと、将来介護費がもらえるということです。

実際には、後遺障害慰謝料などの賠償金と一緒に一括で受け取ることが多いので、一生分の金額を事前に計算して請求することになります。ただ、交通事故の被害者がいつ亡くなるかは、神様でもない限り予測できません。そのため将来介護費の計算には、厚生労働省が作成している簡易生命表に記された平均余命を使います。

来介護費は、いつ、どのように受け取れる?

上でも言ったように、一般的には入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などと合わせて、示談金として一括で受け取ることになります。そのため示談交渉の時点で、「今後の介護がどれだけ大変なのか」を加害者側の保険会社に認めさせなければなりません。

いったん示談金として将来介護費を受け取ってしまうと、その後、事情が変わってもっと介護費が必要になったとしても、追加で請求することはできません。ですから、必要な将来介護費をきちんと受け取るためには、弁護士など交渉のプロの手を借りるのがベストでしょう。

将来介護費の計算方法が知りたい

将来介護費の総額は、以下の式で計算します。

介護にかかる日額 × 365日 × 生存可能期間に対応したライプニッツ係数

なぜ「介護にかかる日額 × 365日 × 生存可能年数」ではないのか、不思議に思う方もいらっしゃることでしょう。ライプニッツ係数とはいったい何なのか、簡単にご説明します。

将来介護費は、示談金として一括で受け取ることが一般的だと言いました。つまり将来受け取るべきお金を、先に受け取ってしまうことになります。

早く受け取った分のお金は、銀行に預けておくと利息がつきます。金利が3%だとしたら、100万円を1年間預けておけば、103万円になります。それを見越して、最初から利息分を差し引いて支払うのが、「中間利息控除」という考え方です。

中間利息控除では、年利3%で計算すると定められています。そのため、1年後に利息を含めて100万円にするには、現在97万5000円を支払っておけばいいことになります。その積み重ねの複雑な計算を、簡単にできるようにしたものがライプニッツ係数です。

余命が30年あったとしても、ライプニッツ係数で計算すると20年足らずの金額になってしまいます。

将来介護費の交渉で気をつけたいポイント

多くの保険会社は、将来介護費の支払いには消極的です。詳細な書類や資料を揃えても、弁護士に依頼しないと認められないケースがほとんどといっていいでしょう。弁護士を入れたとしても、将来介護費が認められないこともあります。

実際に介護が必要だったとしても、交通事故でかなりの重傷を負って重い後遺障害が残っていなければ、将来介護費を受け取るのは難しいでしょう。目安としては後遺障害3級以上です。

なお、将来介護費として請求できるのは、介護にかかる人件費だけではありません。寝たきりになってしまい紙オムツが必要といった場合は、紙オムツ代などの雑費も請求できます。

また将来介護費の交渉の際には、すでに介護サービスを利用している実績があったほうが、費用の請求が認められやすいという実情があります。ただし、それでも将来介護費が認められなかった場合には、介護サービスの費用がすべて被害者側の持ち出しになってしまうリスクもあります。

将来介護費が請求できるのか、できるとしたらどのくらいの金額なのか、予め相場を知って交渉に臨むためにも、なるべく早い時期に交通事故を専門とする弁護士に相談することをおすすめします。