危険運転致死傷罪とは?|弁護士が解説

危険運転イメージ

危険運転致死傷罪とは?

危険運転致死傷罪は一定の危険な状態で自動車を走行・運転した結果、人を死傷させるに至った者に対して課される刑罰です。平成13年の刑法の改正により追加された比較的新しい犯罪類型です。

その後さらに改正され、平成25年に、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」という名前の法律ができ、刑法から独立して規定されることになりました。

どうして危険運転致死傷罪は規定された?

以前、交通事故を起こした場合に適用された犯罪は業務上過失致死罪のみでした(刑法第211条)。業務上過失致死罪は刑の上限が5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

しかし、酒酔い運転や無免許運転、無謀運転などで事故を起こし、人を死に至らしめたにもかかわらず、わずか数年の刑のみで済んでしまうことに対して怒りの声が上がったのです。署名活動なども行われ、平成13年になって法律として規定されたのです。

危険運転致死傷罪の内容

以下の行為により、人を死に至らしめたり、怪我をさせた場合に適用されます。おおまかには、以下の行為が刑罰の対象となります。

  • 酩酊・薬物運転致死傷罪・・・アルコール(飲酒)または薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
  • 準酩酊・準薬物運転致死傷罪・・・下記※1を参照。アルコール(飲酒)又は薬物の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれを認識しながら自動車を運転し、その結果としてアルコール(飲酒)又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
  • 制御困難運転致死傷罪・・・進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
  • 未熟運転致死傷罪・・・進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
  • 妨害運転致死傷罪・・・ 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
  • 信号無視運転致死傷罪・・・赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
  • 通行禁止道路運転致死傷罪・・・通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
  • 病気運転致死傷罪・・・政令に定める特定の疾患の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれを予め認識していながら自動車を運転し、その結果として当該疾患の影響により正常な運転が困難な状態に陥った場合※2

※1 「準酩酊・準薬物運転致死傷罪」は、その前に規定されている「酩酊・薬物運転致死傷罪」と何が違うのでしょうか?分かりやすくいうと、「酩酊・薬物運転致死傷罪」は「分かっていながらやった犯罪」、「準酩酊・準薬物運転致死傷罪」は「結果的にそうなることをわかっていながらやった犯罪」ということになります。

※2 「病気運転致死傷罪」にいう「政令に定める特定の疾患(病気)」とは以下のものが規定されています。

  • 幻覚の症状を伴う精神病(統合失調症)
  • 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気(てんかん・再発性の失神・無自覚性の低血糖症)
  • 1・2のほか,自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気(そううつ病・重度の眠気の症状を呈する睡眠障害)

危険運転致死傷罪の刑罰

  • 人を負傷させた場合・・・15年以下の懲役
  • 人を死亡させた場合・・・1年以上の有期懲役

免脱罪・加重規定等

飲酒運転をして事故を起こしておきながら、罪を恐れて事故後に再度飲酒をしたり、大量に水を飲んで罪を逃れようとした者が出てきました。そこで逃げ得を防ぐために免脱罪が規定されました。

「アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたとき」 → 12年以下の懲役

また、無免許で無謀な運転をして事故を起こした場合の加重規定も定められています(6条)。

過失運転致死傷罪と危険運転過失致死傷罪の関係

過失運転致死傷罪は、しばしば業務上過失致死傷罪と危険運転致死傷罪の中間にあたる罪であるといわれています。

初めに創設されたのは危険運転致死傷罪です(平成13年)。

危険運転致死傷罪の適用には、飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難な状況であったことや、危険を認識しながら故意によって起こした事故であることを立証しなければならないという難しい要件があります。立証ができずに危険運転致死傷罪ではなく業務上過失傷害罪の適用になってしまった事件は数多くあります。

加害者が危険運転致死傷罪ではなく業務上過失傷害罪の適用で免れるために、飲酒運転でありながら事故現場から一旦逃げ、アルコールが抜けてから自首し、酒酔いであったことの立証を困難にするケースなども多くみられました。危険運転致死傷罪と業務上過失傷害罪の刑罰の差が開きすぎていることが、このようなひき逃げなどを助長することにつながるのではないかという意見により、この差を埋めるために、過失運転致死傷罪が創設されました。

過失運転致死傷罪が業務上過失傷害罪と危険運転致死傷罪の中間の罪といわれるのはそのためです。

業務上過失致死傷罪
5年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金
過失運転致死傷罪 7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪 (負傷事故)15年以下の懲役・(死亡事故)1年以上の懲役

上記の通り、危険運転過失致死傷罪は行為が限定され立証も難しいところもありますが、昨今は刑法の改正により飲酒運転や事故の厳罰化が進められています。

当事務所は、交通事故の被害救済を目指しております。そのため、ご相談は被害者の方を対象とさせていただいております。恐れ入りますが、加害者の方のご相談・行政処分・刑事処分に関するご相談はお受けしておりませんので、予めご了承ください。