
保険会社からお金が支払われる際に、「承諾書」「免責証書」「示談書」というものが保険会社から送られてくることがあります。このページでは、この「承諾書」「免責証書」「示談書」についてご説明します。
「承諾書」「免責証書」「示談書」、効力はほぼ同じ
交通事故の被害にあい、最終的に保険会社からまとまったお金が支払われる際に、「承諾書」「免責証書」「示談書」というものが保険会社から送られてくることがあります。この「承諾書」「免責証書」「示談書」、あまり見かけない名前ですがどういった効力があるのでしょうか。
実は、最終的な効力としてはほとんど同じものです。
要するに保険会社が保険金を支払ってしまった後は一切お金は出ませんよということです。「事件をすべて終了させる」効果があるのです。
実際の交通事故の実務では「免責証書」と呼ばれることが多いと思います。各保険会社はさまざまな名称を使用しています。ページの下部に一覧がありますのでご覧ください。
「承諾書」や「免責証書」、サインしていいの?
「承諾書」や「免責証書」、どちらも最終的にお金を支払うものなので、結局は「適正」な金額かどうかがポイントとなります。
この「適正」が非常にまぎらわしい。保険会社は、「適正な金額です。弊社基準で精いっぱい出しました!」というでしょう。ところがどっこい。実際に弁護士が入って交渉や裁判をすると、ほとんどの事例で保険金が何倍にもなります。
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「どういうこと?そんな都合のいい話があるの?」と思われるかもしれません。「大手の保険会社がそんないい加減なことをするはずがない」、そう思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、実際に弁護士が入って交渉すれば、ほぼすべての事件で保険金が上がります。要するに、保険会社は個人の方には低い額しか提示していないのです。
サインする前に弁護士に相談を
ただ、低い額であっても、一度「承諾書」「免責証書」にサインをしてしまったら終わりです。裁判をしても一切金額を上げることはできません。サインをする「前」に一度ご相談されてください。痛い思いをした交通事故、金額が低いままでは到底納得できない、苦しい思いはもうたくさん、と思われる方は、必ず一度は弁護士にご相談ください。
「承諾書」「免責証書」「示談書」、微妙な違い

実際の効力に違いはない、のは事実ですが、微妙な違いがないわけではありません。
実は、「承諾書」「免責証書」については、被害者の名前(または代理人の弁護士の名前)とハンコだけで、加害者の署名押印はありません。
一方、「示談書」の場合は加害者(または代理人の弁護士)の署名押印があることがほとんどだと思います。厳密にいうと、「承諾書」「免責証書」は一方的意思表示で、「示談書」は双方の合意を記載したものです。
つまり、「承諾書」は被害者が「この書面の金額で終わらせることを承諾します」、「免責証書」は被害者が「この書面の金額が払われれば加害者の責任を免じます」と一方的に宣言するものです。加害者の署名押印はありませんので、形式的にいうと加害者の同意は記載されていません。
これに対して、「示談書」については加害者・被害者(またはその代理人の弁護士)の署名押印がありますので、双方の「この書面の金額でこの事件を終わらせること」の承諾の意思が記載されています。
ただ、基本的に「承諾書」や「免責証書」は保険会社が作成して被害者に送ってくるものですから、被害者の一方的な意思表示といっても保険会社が後で支払わないということはありません。
一方、「示談書」は双方の合意として記載されていますので、形式上は効力が強いように思えますが、実際に何か違いがあるかというと、ほぼ違いはありません。むしろ、「示談書」では加害者の署名押印が別途必要なので、やりとりの時間がかかって支払いが遅くなる、というデメリットもあります。
したがって、交通事故においては「承諾書」「免責証書」「示談書」で実際の違いはないといえるでしょう。
各保険会社の承諾書等の名称
保険会社 | 承諾書のタイトル |
---|---|
東京海上日動火災保険 | 損害賠償に関する承諾書(免責証書(人身用)) |
損害保険ジャパン | 承諾書(免責証書) |
あいおいニッセイ同和損害保険 | 人身傷害に関する承諾書 |
三井住友海上 | 事故解決に関する承諾書(免責証書) |
日新火災海上保険 | 免責証書(承諾書) |
共栄火災海上保険 | 人身損害に関する承諾書(免責証書) |
JA共済 | 人身事故の損害賠償に関する承諾書(免責証書) |
自動車共済協同組合 | 損害賠償に関する承諾書(免責証書) |
全労災 | 損害賠償に関する承諾書(免責証書) |
ソニー損害保険 | 損害賠償に関する承諾書(免責証書) |
アクサ損害保険 | 人身損害に関する承諾書 |
AIG損害保険 | 免責証書(人身事故) |
チャブ損害保険(旧エース損保) | 免責証書(念書) |
イーデザイン損害保険 | 免責証書(人身用) |
「絶対に支払わない」の例外も
「承諾書」「免責証書」「示談書」については、これらの書面を作成後は、書面以外のお金について保険会社は一切支払いはしない、といいました。
ただ、ものすごくまれに例外として支払われることがあります。「承諾書」「免責証書」「示談書」をよく読むと、最後のほうに「もし示談の後に、後遺障害で高い等級が取れた場合は別途支払う」という文言が書いてあることがあります。
もし、示談後に、示談前の後遺障害等級よりも高い等級が取れた場合、保険会社は高い等級に従って改めて保険金を支払う、という内容です。本当に高い等級が取れれば、保険会社は保険金を支払うかもしれません。
しかし、示談の後で、示談前よりも高い等級が新たに取れるなどということは、実際はほとんどありません。事例としては存在しているようですが、きわめてまれだと思います。
したがって、やはり示談の時にしっかりとお金をもらっておかないと、後から請求することは事実上まず不可能だと思っておいた方がよさそうです。
その点でも、サインの前には必ず弁護士に相談されることをお勧めします。
アズール法律事務所では交通事故の被害者の方からのご相談は無料です。ぜひご利用ください。