
不運にも交通事故の被害者となった場合、多くの方は相手側の保険会社と示談交渉をすることになります。この時の選択肢は2つ。ご自分で対応するか、弁護士に依頼するかです。
相手側の保険会社の提案をそのまま受け入れるならば、ご自分でも対応しても良いと思います。しかし、保険会社からの提示や対応に疑問を感じるならば、交通事故に詳しい弁護士に相談した方が最終的に良い結果になる場合が多いです。
とはいえ、実際の判断については迷われる方が多いと思います。この記事ではこうした交通事故の被害者の方の悩みを解消するために、示談交渉について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
なお、示談は一度合意してしまうと、取り消すことはできません。示談書にサインをする前に、専門家の意見を聞いてしっかり検討することをお勧めします。
この記事を読むと…
・交通事故の「示談」の意味や流れがわかります
・「示談」で問題になるのはどんなことかわかります
・「示談金」の内容と計算方法がわかります
・「示談」を有利に進める方法がわかります
目次
交通事故の示談とは
示談の意味
よく耳にする「示談」という言葉にはどんな意味があるのでしょう?
示談とは「争いごとを当事者相互の話合いで解決すること」です。法律上の言葉では「和解」ということになります。和解が成立するのはは当事者の合意があった場合のみです。
逆に言うと、当事者である被害者の方の合意がなければ示談は成立しません。また、いったん示談が成立したら、後から一方的にその内容を変更することもできなくなります。
たとえ口約束だったとしても、お互いが合意すれば示談が成立したとみなされることがあるので注意してください。
示談交渉の相手
示談交渉は当事者間で行うのが原則です。交通事故の場合の当事者は、事故を起こした加害者と被害者…と考えがちですが、実はちょっと違います。
実際の交通事故の示談交渉の多くは、事故の損害の「賠償金を支払う当事者」と「受け取る当事者」の間で行われます。
加害者が自動車やバイクを運転していた場合は、加入していた自動車保険会社から賠償金が支払われますので「支払う当事者」は保険会社や共済ということになります。
保険会社は交通事故の示談交渉を生業としているプロです。しかも慈善団体でも公的機関でもなく営利企業だということを忘れてはいけません。自社の利益を確保するためにさまざまなテクニックを駆使して示談交渉を有利に進めようとします。
これに対して賠償金を「受け取る当事者」である被害者は、交通事故に不慣れな一般の方であることがほとんどだと思います。自分で交渉を行った場合、不利な条件で合意してしまったとしても仕方がないのではないでしょうか。
しかし、被害にあった方が不利になってしまうなんて何かおかしいですよね。そこで法律では、被害者の方については弁護士が代理人として交渉することを認めています。
もちろん弁護士に依頼すると弁護士費用がかかります。しかし損害が大きい場合はそれを差し引いても、弁護士に依頼した方が最終的に有利になることがほとんどです。しかも自分で交渉するという重圧から解放されるという大きなメリットもあります。
まずは無料相談を利用して、一度は弁護士の話を聞いてみることをお勧めします。
示談交渉を始めるタイミング
示談交渉は被害者側の損害が確定してから始めるのが鉄則です。
物損の場合は、修理や買い直しにかかる費用が確定してから交渉するべきです。ケガをした場合は、完治して治療費が確定してから。後遺症が残った場合は後遺障害等級が確定してから、最終的な示談を行うようにしましょう。
加害者側は少しでも早く決着をつけて安心したいと考えるものです。示談を急かされても、それに応じる必要はありません。後から後悔しないためにも、焦らずじっくり考えて対応したいものです。
ただし弁護士に相談をするタイミングについては、できるだけ早い方が良いと言えます。事故からの日数が経っていない方が、最終的な示談に向けてのさまざまな対策が打てるのです。
一度ご相談いただければ、どのタイミングで何をすべきかを、個別にアドバイスすることが可能です。
示談交渉の流れ
交通事故の被害でケガをして後遺障害が残った場合の「示談までの流れ」を簡単にまとめたのが下の図になります。

①事故発生
交通事故にあってケガをされた場合は、必ず警察を呼んでください。警察を呼ばなかったり、呼んでも人身事故扱いではなく、物損事故扱いにすると、後で慰謝料・保険金が出なくなることがあります。
②治療(入通院)
通院や治療は、基本的には整骨院等ではなく、病院で行うことが大事です。
きちんと治療しないと後で後遺障害等級を取れなくなることがありますので、しっかり通院してください。
③症状固定
一定の期間の治療を終えても完治せず、医師からこれ以上は回復しないと判断されることを「症状固定」といいます。事故から半年後くらいの場合が多いと思います。
④等級認定
症状固定のタイミングで医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼します。後遺障害診断書に加えて、それまでの治療経過、弁護士の意見書などを揃えて、後遺障害等級認定の申請を行います。申請から結果が出るまで、おおよそ3ヶ月程度かかります。
⑤示談交渉
等級の結果が出てから任意保険会社との慰謝料・保険金の話が始まります。まずは弁護士による事実関係の精査を経て、交渉の元となるたたき台を作り、相手側の保険会社に提示します。これから2~3ヶ月ほどの交渉を経て、実際に示談となることが多いです。
⑥示談成立
保険会社との交渉を経て、納得のいく保険金が出れば示談成立となります。
どうしても納得できない場合は裁判をすることになりま す。実際に裁判ということになると、期間はさらに1年以上かかることが多くなります。
示談交渉に関するよくあるご相談
交通事故を専門に扱うアズール法律事務所には、被害者の方からたくさんのご相談が寄せられます。ここでは代表的なものを選んで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
①加害者が示談に応じてくれない(保険を使おうとしない)
通常の流れでは、事故を起こした加害者は自身が加入している自動車保険会社にその旨を連絡し、その保険会社から被害者の方に治療費の支払いや示談金についての連絡が入ります。
しかし、加害者が保険会社への連絡をしないと、一向に示談は進まないことになります。
加害者が保険会社に連絡をしない理由はいくつか考えられます。
意外にも多いのが、事故を起こすと翌年からの自動車保険料が上がるのが嫌で連絡しない…と言うものです。ケガをした被害者の立場からすればとんでもないことなのですが、自分の責任を認めず、逃げてしまおうとする加害者は実際にいます。
また、加害者が何らかの理由で保険に入っておらず、支払い能力もないというケースもあります。
不運にもこうした加害者にあたってしまった場合、最も有効な解決方法は交通事故に詳しい弁護士に相談することです。弁護士を通して連絡をとると、たいていの加害者は手のひらを返したように保険会社を通じた示談に応じます。もし応じないのであれば、調停や裁判といった法的手段をとることもできます。
加害者が無保険の場合は、示談交渉を行う相手の保険会社が存在しないので、対応はさらに難しくなります。しかし自賠責保険への被害者請求を行うことなどを含め、少しでも多くの賠償金を獲得する手段を講じることはできます。
まずは、弁護士に相談して状況を整理することをお勧めします。
②治療中にかかる費用(交通費・生活費など)を何とかしてほしい
実際の示談交渉が行われるのは、ケガの治療や後遺障害の認定が済んでからになります。つまり、最終的な示談金が被害者の方の手元に届くのは事故から1年以上経ってからということも珍しくありません。
ケガのために収入を失った被害者の方にとっては、この間の金銭的なやりくりは大きな問題になります。
実際、通院のための交通費や当面の生活費などを、相手側の保険会社から支払ってほしいという被害者の方の相談はとても多いです。
こうした要望については、直接保険会社と交渉するよりも、弁護士を通した方が通りやすくなります。過去の事例等を熟知している専門家からの要請であれば、保険会社も対応せざるを得ないというわけです。
仮に保険会社が応じなかったとしても、自賠責保健の前払い制度を使ったり、最終的な示談金交渉で請求する等の方法があります。
③希望の後遺障害等級に認定されませんでした
相手側の保険会社に手続きをまかせて、思うように後遺障害等級が認定してもらえなかった、または非該当と判断されてしまった、という方が多くいらっしゃいます。
後遺障害等級の申請にはさまざまな書類が必要となり、それをどれだけ念入りに準備するかで、後遺障害等級に認定されるかどうかが決まります。
残念ながら保険会社にまかせた場合は、それほど熱心に準備をしてくれるわけではないようです。実際に、とある有名な保険会社が申請した書類を取り寄せて確認したところ、診断書に必要な記載が漏れていたり、必要な検査が行われていなかったりということがありました。
保険会社としては、後遺障害等級に認定されない方が、支払う示談金が少なくて済むのですから、まあ仕方のないことかもしれません。
後遺障害等級認定の審査結果については「異議申し立て」という手続きをとることで再審査を受けることができます。
ただし、同じ資料を再び提出しても審査結果は変わりません。なぜ希望した等級が認められなかったのかを分析し、それを覆すような医学的証拠を用意する必要があります。
異議申し立てで等級変更が認められるのは、およそ5%の確率と言われており、最初の審査よりもだいぶ難易度が上がります。
当然、保険会社は異議申し立ての手続きをやりたがりませんので、こうした場合は経験が豊富な弁護士に相談するのがお勧めです。弁護士による調査で、最初の審査で明らかに不足していた資料などが特定できれば、意義申し立てが認められる可能性は上がります。
もしも保険会社の対応に疑問がある場合は、最初から弁護士に相談していただくのが最も良いと思います。
④示談金の相場がわからない
保険会社と個人で示談交渉をする場合、まずは保険会社から示談金額が提示されます。
「当社の基準で最大限の金額です」と担当者は言うかもしれませんが、実はそんなことはありません。これまでたくさんの示談交渉を行ってきた経験から言えば、保険会社が提示するのはほとんど最低限の金額です。
しかし、交通事故に不慣れな被害者の方の場合、示談金の相場がわからず、保険会社の言うとおりに示談書にサインしてしまうことがほとんどです。そのため、本来受け取るべき示談金額の半分ほどしか受け取れないという事例が本当に多いのです。
保険会社の基準というのは、各社が独自に定めた保険金の算定基準で、実際には最低限の補償であるはずの自賠責保険の基準とほぼ同等です。
一方、保険会社との交渉に弁護士が入った場合に採用される「弁護士基準」は、これまでの交通事故の裁判の判決をもとに作成された基準で、被害者の方が受けた損害に相応しい金額を加害者側(保険会社)に支払わせるものです。保険会社の基準で算出した金額の2〜3倍になることもめずらしくありません。
示談金を弁護士基準で算出した相場については、少し複雑になるのでこのページの後半で詳しく説明します。お急ぎの場合は、直接ご相談ください。個別に概算金額をお答えすることができます。
⑤過失割合について納得できません
「過失割合」というのは、交通事故の加害者と被害者との「事故の責任の割合」のことを言います。被害者側にも過失がある場合は、過失割合に従って賠償金は減額されてしまいます。
たとえば過失割合が「8対2」の場合、100万円の賠償金は80万円に減額されることになります。
この過失割合は警察が決めているように思われることが多いのですが、実はそうではありません。警察は民事の問題には介入しない決まりになっています。
ではどうやってが過失割合を決めるのかというと、過去の裁判例を基準としつつ、最終的には当事者どうしの合意というのが原則となっています。
当事者どうしといっても実際は加害者側の保険会社が主導するかたちで「過失割合はこうなります」と被害者の方に合意をとることがほとんどです。
その過失割合が正しいのかどうか、一般の方には判断することは困難でしょう。専門家に言われると「そういうものか」と合意してしまうケースがほとんどだと思います。
そこで被害者側に立つ専門家が弁護士です。弁護士であれば保険会社が主張する過失割合が正しいかどうか判断することができます。そして、もし過失割合に問題があるようであれば、過去の判例をもとに保険会社と交渉が可能です。
⑥後になってから症状に気づいたのですが…
事故の直後は気がつかなかった痛みや症状について、しばらく時間が経ってから自覚するということは多いと思います。事故の直後は興奮状態にありますし、複数の箇所をケガしていると自分でもすべてを把握できないものです。
特に腰椎や胸椎の圧迫骨折などの進行性の骨折では、事故からしばらく時間が経ってから激しい痛みが出る場合があります。
しかし、後遺障害等級の審査では「事故当初から症状の訴えがあることが必要」とされています。保険会社との示談交渉においても、後になってから気づいた症状についてはなかなか対応してくれることはなく、後遺障害として認められないのが現実です。
こうした事態に対応するためには、症状を自覚したらなるべく早く医師に伝えて、カルテ等に記載してもらうことが必要です。ご自身でも、いつどんな症状が出たかを日付入りのメモや画像で残しておくと、証拠として利用できる場合があります。
その上で後遺障害等級の審査を保険会社に任せず「被害者請求」で行いましょう。被害者請求は被害者側が資料を揃えて後遺障害等級の審査を受けられる制度です。とはいえ自分で難しい作業をする必要はなく、弁護士に依頼すればすべて任せることができます。
交通事故と後遺障害に詳しい弁護士ならば、後から自覚した症状を事故と関連付ける資料を揃えて被害者請求を行うことで、獲得できる可能性があります。
⑦交渉が長引くと時効にならないかが心配です
結論から言えば、被害者の方が時効を気にする必要はほとんどありません。
確かに、交通事故による損害を加害者側へ請求する権利(損害賠償請求権)は民法により3年または5年で消滅するとされています。
損害賠償請求権の消滅時効
物損 | 事故の翌日から3年 |
---|---|
傷害 | 事故の翌日から5年(※3年) |
後遺障害 | 症状固定日の翌日から5年(※3年) |
死亡 | 死亡日の翌日から5年(※3年) |
(※保険会社に請求する場合)
ただし、基本的にに加害者側は早めに示談交渉を終わらせようとする傾向があります。
その理由のひとつは、刑事裁判がある場合に、示談が成立していたほうが印象が良くなること。また、示談が長引くほど損害賠償額が大きくなりがちだということが挙げられます。
そして実際には保険会社が時効を主張してくることはほとんどありません。
被害者側としても、早く示談を終わらせて示談金を受け取りたいという気持ちがあると思います。しかし、あわてて示談することは避けるべきです。じっくり時間をかけて損害の内容を精査して交渉したほうが、最終的には有利になるケースが多いのです。
とはいえ、消滅時効までの期間は意識しておく必要があります。後遺障害等級の認定や示談交渉にかかる時間を逆算してしっかり示談交渉を行わなければなりません。あまりに放っておくと債務不存在訴訟を起こされる可能性もあります。
信頼できる弁護士に示談交渉を任せるのがいちばん安心だと思います。
⑧示談交渉は自分でできる? 弁護士に依頼する?
示談交渉というのは当事者どうしの話し合いで解決することですから、もちろんご自身で行うことも可能です。
しかし、交通事故の場合は加害者当人との交渉となることはまれで、賠償金(示談金)を支払う当事者である自動車保険会社と交渉することになります。こうなると、相手は交通事故が専門のプロですから、個人ではなかなか対抗することができません。被害者の方に不利な条件で示談することになってしまいます。
こうした事態を防ぐために、被害者は示談交渉を弁護士に依頼しても良いということになっています。
交通事故に詳しい弁護士であれば、保険会社に対抗し被害者の方に有利な条件を引き出すことが可能性が高くなります。最終的な賠償金(示談金)の額が保険会社の提示の2〜3倍になることも珍しくありません。
なぜ弁護士が入ると示談交渉が有利になるのでしょう? それは、示談交渉がうまくいかない場合にはいつでも裁判に持ち込めるからです。交通事故の裁判では被害者の損害を正しく評価した判決となる場合が多く、しかも莫大な時間と手間がかかります。保険会社としては裁判になることは極力避けたいと考えます。
逆にご自分で示談交渉をした場合、なかなか話がまとまらないと保険会社が裁判をちらつかせてくることがあるかもしれません。弁護士に依頼せずに個人が裁判で争うのは非常に困難なことを知っているのです。
やはり最終的に裁判で争うことができるという切り札を持っている方が有利にる可能性が高いのです。
弁護士費用を気にする方もいらっしゃると思います。しかし弁護士が入ることで示談金は大幅に増額しますので、弁護士費用を差し引いたとしても、被害者の方が受け取る金額的なメリットは大きくなります。

アズール法律事務所のように成功報酬制の料金体系であれば、弁護士費用を気にせずご相談いただけます。相談料については無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。
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交通事故の弁護士費用について
示談金の相場と計算方法
交通事故の示談金とは
交通事故の「示談金」は、加害者と被害者の双方が合意した「損害賠償金」です。被害者の方のすべて損害を金額に換算したものといえます。保険会社から支払われる場合は「保険金」と呼ばれることもあります。
示談金の中には、精神的苦痛に対して支払われる「慰謝料」、収入減を補償する「休業損害」「逸失利益」、実際にかかった「治療費」「交通費」などが含まれます。
交通事故の示談金の相場
交通事故の示談金については、被害者の方の「年齢」「年収」「後遺障害等級」の3つがわかれば、おおよその金額が計算できます。
複雑な計算をしなくても済むように自動計算機を用意しましたので、下の画像をクリックして試してみてください。慰謝料等を含んだ弁護士基準での示談金の相場がすぐにわかります。
示談金に含まれるもの
交通事故の示談金は、被害者の方のすべて損害を賠償するものです。その中にはさまざまな項目が含まれます。
治療費、治療雑費、交通費
交通事故によるケガの治療費は、加害者側に請求できます。一般的には加害者側の保険会社から病院に直接支払われますが、これも示談金の一部に含まれます。
また、通院にかかった交通費や治療中に必要な松葉杖や紙おむつの費用も示談金の一部として請求することができます。
治療費が支払われるのは完治して治療が終了するまでか、後遺障害の手続きを進めるために「症状固定」とするまでです。症状固定の後では痛みが残っていても後遺障害として扱われるため治療費は支払われなくなります。
休業損害
休業補償とは、交通事故で仕事を休んだ分の補償です。交通事故のせいで、収入が減ってしまったという損害(休業損害)に対する賠償金で、これも示談金に含まれます。
交通事故によるケガで入院・通院となり、休んだ分給与が減らされてしまった、ボーナスが減額された、見込まれていた昇給がなくなった、諸手当が無くなった…など、収入の減収分を賠償するのが休業損害です。
休業補償が支払われるのは治療が終了するまで、または症状固定までです。症状固定後の減ってしまった収入については逸失利益として示談がまとまった後に一括で支払われることになります。
なお、休業損害の計算方法については、被害者の方が会社員なのか、自営業なのか、アルバイトなのか、主婦なのかによって異なります。詳しくは下記のページをご覧ください。
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交通事故の示談を有利に進める方法をくわしく解説
傷害慰謝料(入通院慰謝料)
「傷害慰謝料」は交通事故でけがをしてしまったことに対する慰謝料です。つまり「けがをしたことによる精神的な苦痛に対する賠償」ということになります。
ただし「精神的な苦痛」をそのまま金額に換算するのは難しいので、実際にはけがの治療に要した期間で金額を決定します。入院、通院の期間や回数に応じた金額が支払われることから「入通院慰謝料」とも呼ばれます。
おおよその計算方法は下記の通りです。
自賠責保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|
・入通院1日につき4,300円 ※治療費、休業損害との合計が120万円までの上限あり |
・入院1ヶ月につき約50万円 ・通院1ヶ月につき約25万円 ※実際の金額は赤い本の入通院慰謝料表(別表1)によります ※むちうちなどの軽症では金額が異なります(同 別表2) |
詳しい計算方法は下記のページにてご確認ください。
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交通事故の慰謝料とは?実際いくらもらえるのかを弁護士が解説
後遺障害慰謝料
「後遺障害慰謝料」は交通事故の後遺症を抱えて生きていくことに対する精神的苦痛に対して支払われます。後遺症慰謝料といってもよいのですが、法律上では後遺障害慰謝料といういい方をします。
後遺障害慰謝料については、後遺障害の重さを表す1級から14級の「後遺障害等級」によってその金額が変わってきます。おおよその相場は下記のとおりです。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級(要介護) | 1650万円 | 2800万円 |
1級 | 1150万円 | 2800万円 |
2級(要介護) | 1203万円 | 2370万円 |
2級 | 998万円 | 2370万円 |
3級 | 861万円 | 1990万円 |
4級 | 737万円 | 1670万円 |
5級 | 618万円 | 1400万円 |
6級 | 512万円 | 1180万円 |
7級 | 419万円 | 1000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
逸失利益
交通事故で後遺障害が残ったときの示談金の中で最も金額が大きくなるのは、ケースにもよりますが「慰謝料」よりも「逸失利益」です。「逸失利益」というのは、交通事故で後遺症が残ってしまったとき、そのせいで減ってしまった今後の収入に対する賠償金のことです。
逸失利益は被害者の年齢や収入をもとに計算します。ただし少しややこしい計算になるので、興味のある方は下記のページをご覧ください。
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逸失利益の増額の可能性は?相場と正しい計算方法を解説
そのほかの示談金(賠償金)
そのほかに加害者側に請求できる賠償金として次のものが挙げられます。
ただし、これらは必ず請求できるというわけではありません。特定の要件を満たしたうえで、相手の保険会社と交渉する必要があります。
示談書の意味とその内容
示談書とは?
交通事故の示談書(または免責証書、承諾書)は、保険会社から被害者に最終的な示談金が支払われる際に、保険会社から送られてくる確認書面のことです。
示談書を交わすことで最終的に大きな金額が支払われ、基本的にそれ以降は保険会社からの支払いはなくなります。このように示談書には、その作成によって事件を終結させるという役割があります。「事件の終わり」という意味でも非常に大事な書類です。
示談書の内容や書き方は?
示談書に特に決まった書き方というものはありません。双方が合意した内容が明確に記載されていれば書式はどんなものでも良いことになっています。保険会社との示談の場合は、その保険会社で決められた書式を使うことが多いと思います。
示談書の内容ですが、以下の項目が記載されるのが通常です。
- 事故に関する内容
- 事故の当事者に関する内容
- 金額・支払に関する内容
- 清算条項
- その他の特記事項
では、各項目別に記載すべき内容を見ていきましょう。
事故に関する内容
事故の内容に関しては、次の項目を記載します。
・事故が起こった日時
・事故が起こった場所
・事故を起こした加害車両のナンバー
・加害車両の所有者
・事故の具体的な態様
「日時」「場所」「加害車両のナンバー」については「交通事故証明書」の記載どおりに記入します。
「事故の具体的な態様」についても「交通事故証明書」記載の「事故類型」を参考にして記入してください。
事故の当事者に関する内容
事故の加害者・被害者を記入します。
・加害者(甲)の氏名・住所
・被害者(乙)の氏名・住所
基本的には「交通事故証明書」に書いてある氏名・住所を記入します。
ちなみに「交通事故証明書」では「加害者」を「甲」、「被害者」を「乙」としています。氏名が変更されていたり、事故時と住所が変わっている場合は、示談書の日付の氏名・住所を記入します。
金額・支払に関する内容
ここでは示談した内容を記入します。
・示談した金額
・支払期限
・支払方法
・振込先口座名
これまでに支払われた既払い金(きばらいきん)がある場合は、「すでに支払われた既払い金○○円のほか○○円を支払う 」というように既払い金と、示談書を交わすときに支払われる金額を別々に記入します。
清算条項
清算条項には、この示談書をもって事件をすべて終了する(清算する)という役割があります。通常、「示談金を受け取った場合、その他の請求は一切しません」という旨を記載します。
その他の特記事項
基本的には、上記の清算条項によって交通事故事件としては終了します。示談書を交わし、最終的な示談金を受け取った後は、一切の請求ができなくなります。
しかし、示談書に「留保(りゅうほ)」を付けた場合は例外的に請求できる場合があります。例えば次のような条項です。
「本件事故による後遺障害が自賠責保険上〇級以上に該当した場合は別途協議するものとする。」
これは、示談当時はわからなかった障害が将来発生した場合に備えるものです。
示談書にサインしても大丈夫?
では、そもそも保険会社から送られてきた示談書にサインしても良いのでしょうか?
答えは「NO」です。なぜなら、どんなに大手の保険会社でも必ず低い金額の示談書を被害者の方に提示しているという現実があるからです。
このサイトの「慰謝料・保険金の自動計算機」で確認していただくか、電話やメールで問い合わせていただければ、本来受け取るべき示談金の金額を確認できます。
少なくとも一度はこうした確認を行なってみてください。
まとめ
交通事故の示談交渉はご自分でも対応することは可能です。ただし、相手が保険会社の場合は、弁護士に対応を依頼したほうが被害者の方にとっては有利になる場合が多いと言えます。
最終的に受け取る示談金が大幅に増額するので、弁護士費用を差し引いたとしてもメリットのほうが大きくなります。
不幸にも、交通事故の被害者となってしまったことはやり直せません。でも、これ以上の後悔をしないためにも、保険会社との示談交渉については、ぜひ交通事故に詳しい弁護士に相談するようにしてください。